横浜・南区の古民家改装したシェアキッチン人気 調理商品販売やマルシェ開催 「店持つ夢かなえられる」

毎月第4土曜日にシムズキッチンで開催されるマルシェには、多くの客が訪れる=横浜市南区

 キッチン設備のある貸しスペース「シェアキッチン」が横浜市南区にあり、主婦らに人気を集めている。古民家を改装し、複数の人が共同使用できるようにした施設で、利用者は調理した商品を電子商取引(EC)サイトなどで販売。自分の「店」を構えるという夢を実現させた人もいる。利用者同士でマルシェを定期開催するなど、シェアキッチンを核としたコミュニティーも広がりつつある。

 昨年11月26日。京急線南太田駅からすぐの場所にある「シムズキッチン」はにぎわいを見せた。この日は、毎月第4土曜日恒例のマルシェ開催日。焼き菓子、紅茶、発酵調味料など、キッチンの利用会員12店舗の商品が並べられ、地元客らが次々に買い求めていた。

 「午前中で売り切れになる商品もある。作った物が売れるのはうれしい」。自家製米こうじを使ったパンをECサイトなどで販売している「mikipan」の海鋒美季さんは、接客に忙しそうにしながら目を細めた。

 シムズキッチンは、2020年にオープンした。同名の会社を経営する志村直樹代表が、祖母の家である築65年超の2階建て6LDKを改装。保健所に申請し、菓子製造業、瓶詰め製造、総菜製造、飲食営業の許可をそれぞれ取得したキッチンを六つ備えている。

 元々リフォーム業を営んでおり、インバウンド(訪日客)を見据えて民泊用に改装していたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い撤退。水回りなどを有効活用できないかと考え、たどり着いたのがシェアキッチンだった。

 「(古民家に)新たな価値が生まれると考えた。近年需要が高まっており、横浜でもはやるのではと思った」と志村代表は話す。

 キッチンにはガスオーブンや冷蔵・冷凍庫、フードプロセッサーなどを設置。利用するには会員になることや、食品衛生責任者などの資格取得が求められる。

 現在の会員数は約50人。主婦や会社員も多いといい、「通常、店舗を構えるには莫大(ばくだい)な費用が発生する。シェアキッチンだと費用を抑えながら、店を持つ夢がかなえられると好評」と志村代表。時間単位で借りることができ、調理した商品は、各自のECサイトなどで販売しているという。

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