2023年、日本株の見通しは?金融アナリストが堅調と考える理由を明かす

あけましておめでとうございます。

2023年卯年の相場格言は「跳ねる」となっています。特に2023年は「癸卯(みずのとう、きぼう)」であり、「癸」は物事をはかるという意味があって、それをまちがうと混乱や動乱につながったり、続いた流れにケリがつく、といった意味もあるよう。

2022年はボラティリティが高く、米金融政策に振り回されて混乱した部分もありましたね。その混乱が継続したり、利上げにケリがつく可能性もありますが、卯が跳ねると思い込まず、慎重に行きたいと個人的には考えています。

今回は年始ですので、2023年の日本株の見通しと投資戦略についてお伝えしていきます。


投資戦略「ダウの犬」とは?

1月4日(水)発表の2022年12月FOMC議事要旨では、金融引き締めを継続するタカ派的な方針が改めて確認される内容となり、2023年は欧米景気後退懸念継続でスタートしたといえるでしょう。株式市場の先行きが不透明な際に着目したい一つの投資法として、安定した高配当株への投資が考えられるのではないでしょうか。

有名な投資戦略の一つに「ダウの犬」があります。とても簡単な投資戦略で、ダウ平均株価を構成する30銘柄を配当利回りが高い順に並べて、配当利回り上位10銘柄を選び、上位10銘柄に同じくらいの金額を投資します。そして年末に売却してまた次の年に同じことをするという、米著名投資家であるマイケル・B・オヒギンズが著書で紹介した投資戦略です。

2022年末ですと、配当利回り上位10銘柄は下記になります。

ダウ【DOW】
ベライゾン・コミュニケーションズ【VZ】
インテル【INTC】
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス【WBA】
スリーエム【MMM】
IBM【IBM】
シェブロン【CVX】
シスコシステムズ【CSCO】
JPモルガン・チュース・アンド・カンパニー【JPM】
アムジェン【AMGN】

また、ダウ平均を構成する30銘柄は景気敏感株のウェイトが重いので、ジョンソン・エンド・ジョンソン【JNJ】など景気後退に強い銘柄もポートフォリオに入れるのもありだと思います。

そしてこの投資戦略は日本でも応用ができます。

日本版ダウの犬は、ダウ平均の代わりにTOPIXコア30から銘柄を選びます。TOPIXコア30 は、TOPIXの構成銘柄のなかで時価総額と流動性が特に高い30銘柄で構成されている指数です。年に一度リバランスをされるのですが、昨年10月31日にソフトバンクが組み入れられました。

日本版ダウの犬銘柄は、下記となっています。

ソフトバンク(9434)
武田薬品工業(4502)
三井住友FG(8316)
本田技研工業(7267)
東京エレクトロン(8035)
三菱商事(8058)
東京海上HD(8766)
KDDI(9433)
みずほFG(8411)
三菱UFJ(8306)

2023年は日本株が相対的に強い

4日大発会の日経平均株価は、前営業日比377円64銭安の2万5,716円86銭と大幅反落。TOPIXは23.56ポイント安の1868.15と4営業日続落しました。

景気の先行き懸念に加え、前日の米国株安、円高進行、先物の下落が重しとなり、昨年2022年9月30日(金)以来、約3ヵ月ぶりに節目の2万6,000円を割り込みました。軟調なスタートとなりましたが、全体の相場観として2023年は日本株が相対的に強いと考えています。

まずは経済成長が欧米より良い見通しとなっていることが理由です。

11月22日(火)にOECD(経済協力開発機構)が発表した2022年の世界経済成長率(実質GDPの伸び率)が3.1%、2023年は2.2%と減速する見通しを発表しています。アメリカは1.8%から0.5%と大幅に成長が鈍化する見通し。ドイツは1.8%から-0.3%とマイナス成長となっているなかで、日本は1.6%から1.8%へ上昇する見通し。今年の数字を比較すると低めですが2023年の成長率では米独を上回るとOECDは予測していることになります。

しかも9月の発表の時より2023年の成長率 が0.4ポイント上方修正されていることでも、日本の経済成長率は期待できるのではと思います。

加えて10月発表の国際通貨基金(IMF)の予想でも、2022年から2023年で見ると、世界経済は3.2%から2.7%に減速予想となっていますが、日本は1.7%から1.6%とわずかな低下にとどまっており、ほかの先進国と比べると良い数字です。

つまり、2023年はG7の中で日本は最も経済成長率が高い見通しといえます。

またインフレも日本は適度なようです。2022年11月22日時点において、OECD(経済開発協力機構)は日本のインフレ率を2022年の2.3%から2023年には2.0%へ低下する見通しを示しています。2022年のアメリカの消費者物価指数(CPI)のピークといえる6月のCPI上昇率は日本は2.2%(生鮮食品除く)、米国は9.1%、ユーロ圏は8.6%、7月は日本は2.4%、米国は8.5%、ユーロ圏は8.9%、8月の消費者物価指数(CPI)上昇率は日本は2.8%、米国は8.3%、ユーロ圏は9.1%と、比較すると日本は過度ではなく脱デフレというような適度なインフレともいえます。

そして、金融政策でも日本は緩和状態が続いています。

日本銀行は12月19日(月)・20日(火)に開催した金融政策決定会合で、長期金利の許容変動幅を従来のプラスマイナス0.25%から0.5%に拡大すると発表しました。事実上の利上げと市場では判断され、主要国の長期金利の上昇につながったようです。サプライズだったので円高進行の要因となりましたが、足元では日本の金融政策では金融緩和が続く状況でそれは日本株にとってはプラスといえます。

さらに、中国政府が新型コロナウイルスの管理を巡る分類を、従来の最上位から1段階引き下げ防疫措置を緩和する方針を示し、新規のパスポートや本土住民に対する香港への旅行許可の発給を再開すると報じられており、ゼロコロナ政策の緩和で中国経済の先行き懸念が和らいでいます。中国経済が復活してくれば、その恩恵も考えられるでしょう。

日本はコロナ禍で完全なロックダウンをしていなかったことや、コロナの影響を受けにくい製造業が多いことで、世界的に見るとコロナ禍による日本株への傷は浅い方であったといえます。その分反動での上昇は少なかったけれど、GDP予想、経済の見通しも相対的に良いのではないでしょうか。2022年に為替市場で円安が進んだこともあり、2023年の日本株は堅調なのではと考えます。

しかしながら、日本は海外景気への感応度が高いため、欧米経済がリセッションや暴落となれば、日本市場も影響を受けることは必至です。加えて台湾有事などの地政学リスクが台頭したり、予期せぬ天災リスクや、政策リスクなどは頭に置いておいた方がいいでしょう。

皆様の投資の参考になれば幸いです。


個人的には、欧米の逆業績相場入りで大きな下落があれば、そこは何年かに一度の買いの好機になるのではと考えています。この連載でも引き続き投資について、また私自身の考え方も共有させていただければと思っております。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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