「不適切な指導」盛り込む 教員用手引書12年ぶり改訂 「指導死」遺族ら期待

指導死について考えようと東京都内の会場とオンラインで開いたシンポジウム

 国が児童生徒に対する指導の在り方を示した教員用の手引書「生徒指導提要」が昨年12月、12年ぶりに改訂され、体罰を伴わなくても子どもを精神的に追い詰める「不適切な指導」の事例が初めて盛り込まれた。教員の行き過ぎた指導を機に子どもが自殺する「指導死」の遺族らから「少しでも自殺防止につながれば」「現場に浸透を」などの声が上がっている。

 改訂された提要は「不適切な指導」の例として▽怒鳴る、ものを投げるなど威圧的・感情的な指導▽言い分を聞かず思い込みで指導▽著しく不安感や圧迫感を感じる場所で指導▽連帯責任を負わせるなど必要以上に罪悪感を与える指導▽指導後適切なフォローをしない-などと列挙。「不適切な指導は不登校や自殺のきっかけになり、いかなる児童生徒に対しても決して許されない」と指摘する。
 文部科学省児童生徒課によると、提要に拘束力はなく参考書としての位置付けだが、担当者は「国の基本的な考え方を示した。先生方への注意喚起にしたい」としている。
 昨年末、長崎市の指導死遺族、安達和美さん(61)らは東京都内の会場とオンラインでシンポジウムを開催。遺族や支援者から提要に期待する声が聞かれた。
 指導死に詳しい杉浦ひとみ弁護士は改訂版提要について「やっとここまで来た」と歓迎。不適切な指導の事例について、問題が起きる前に保護者側と学校側が情報共有することが重要だと述べた。
 指導死の名付け親で「『指導死』親の会」の大貫隆志共同代表は、謝罪や密告の強要、見せしめ的な罰則なども自殺につながると解説。「落ち着いて見える教室は非常に評価が高い。それが恐怖や監視によるものだとしても、教師自身『指導力がある』と勘違いしてしまう」と指摘した。
 安達さんは2004年、長崎市立中2年だった息子の雄大さん=当時(14)=が教師の指導直後に学校で飛び降り自殺した。提要について「遺族の要望を取り入れてくれた」と評価した上で「県、市の教育委員会にも周知徹底するよう求めていきたい」と語った。


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