2023年の注目宇宙開発ニュース 前編:新型ロケットの打ち上げ成功なるか?

2023年が始まりました。2022年はアメリカ航空宇宙局(NASA)が主導する「アルテミス計画」にとって初めてとなる「アルテミス1」ミッションが成功裏に終わり、「ハッブル」宇宙望遠鏡の後継機「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡(JWST)が撮影した数々の宇宙写真の公開など、宇宙開発・探査が大きく前進した年となりましたが、2023年はどのような宇宙開発や宇宙探査が予定されているのでしょうか?

前編では、新型ロケットの打ち上げと有人宇宙飛行を中心にいくつかピックアップしてお伝えします。

■最新ロケットの打ち上げ!

2023年は、新開発のロケットが打ち上げに成功するかどうかが一つの焦点となるでしょう。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、先進光学衛星「だいち3号」を搭載した次期主力ロケット「H3」試験機1号機の打ち上げを実施する予定です。打ち上げ予定時間帯は日本時間2023年2月12日(日)午前10時37分55秒から午前10時44分15秒に設定されています。

【▲ H3ロケット試験機1号機 1段実機型タンクステージ燃焼試験(CFT)後の機体(Credit: JAXA)】

H3ロケットは日本の宇宙活動で中心となる基幹ロケットとして開発が進められ、現在使用されている主力ロケット「H-IIA」の後継機です。当初の計画では2020年度に打ち上げが予定されていましたが、新開発の「LE-9」エンジンの問題を解決するために2回延期されています。

H3ロケット試験機1号機に搭載されるペイロードの「だいち3号」は、2011年5月に運用を終えた陸域観測技術衛星「だいち」の光学観測ミッションを引き継ぐ地球観測衛星です。

【▲ 先進光学衛星「だいち3号」の想像図(Credit: JAXA)】

参考記事:新型ロケット「H3」試験機1号機は2023年2月12日打ち上げ JAXAが正式発表

アメリカでは「ヴァルカン」の初打ち上げが2023年第1四半期に予定されています。ヴァルカンは主力ロケットとして使用されてきた「アトラスV」ロケットの後継機です。全長は82mあり、第1段にはブルーオリジン社の「BE-4」エンジンが取り付けられます。

ヴァルカンの初打ち上げでは、米国の民間企業アストロボティック(Astrobotic)の月着陸船「ペレグリン」が搭載されます。ペレグリンには日本の民間企業ダイモンが開発した月面ローバー「YAOKI」も搭載され、月面を走行する予定です。この他にも相乗り衛星として、アマゾン(Amazon)の衛星コンステレーション「カイパー(Kuiper)」のプロトタイプ(試験機)2機も搭載されます。

【▲ ケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられるヴァルカンロケットの想像図(Credit: Amazon)】

参考記事:ULAの新型ロケット「ヴァルカン」初打ち上げは2023年第1四半期の予定 アマゾンの衛星コンステレーション用試験機搭載

■有人宇宙飛行も充実!

2023年2月、NASAの有人宇宙飛行ミッション「Crew-6」が実施される予定です。Crew-6にはNASAのスティーブン・ボーエン(Stephen Bowen)飛行士とウォーレン・ホーバーグ(Warren Hoburg)飛行士、アラブ首長国連邦(UAE)のスルタン・アル・ネヤディ(Sultan Al Neyadi)飛行士、ロシアのアンドレイ・フェジェーエフ(Andrey Fedyaev)飛行士が参加します。

4人の飛行士はスペースXの「クルードラゴン」宇宙船に搭乗して国際宇宙ステーション(ISS)へ向かい、約半年間滞在します。スルタン飛行士とアンドレイ飛行士は、初めての宇宙飛行になリます。4人のクルーメンバーが2022年12月にJAXAの筑波宇宙センターを訪れて訓練を受けたことを、スルタン飛行士が自身のインスタグラムで明かしました。

【▲ 国際宇宙ステーションに接近する有人宇宙船「クルードラゴン」エンデバー。2021年4月24日撮影(Credit: NASA)】

スペースXのクルードラゴン宇宙船は、NASAのミッションだけでなくクルー全員が民間人から構成されるミッションにも使用されます。

実業家のジャレッド・アイザックマン(Jared Issacman)氏が手掛ける宇宙飛行ミッション「ポラリス(Polaris)」は、2023年3月以降に実施予定です。ポラリスでは3回の有人宇宙飛行が計画されていて、最初のミッション「ポラリス・ドーン(Polaris Dawn)」では民間宇宙飛行としては初めての船外活動を実施する予定です。

【▲ 民間宇宙飛行ミッション「ポラリス・ドーン」のイメージ画像(Credit: Polaris Project)】

関連記事:スペースXの「クルードラゴン」で民間初の船外活動実施へ、宇宙飛行ミッション「ポラリス」発表

いっぽう、ボーイングが開発する有人宇宙船「スターライナー」は、2023年4月に有人飛行試験ミッション「CFT(Crew Flight Test)」を実施する予定です。搭乗するのはNASAのバリー・ウィルモア(Barry "Butch" Wilmore)飛行士とスニータ・ウィリアムズ(Sunita Williams)飛行士の2人です。

2022年5月19日にはスターライナーの無人軌道飛行試験ミッション「OFT-2」が実施され、打ち上げとISSへのドッキングと滞在を経て、無事に地球へ帰還しました。

【▲ ボーイングの新型宇宙船「スターライナー」を搭載して打ち上げられたULAの「アトラスV」ロケット(Credit: NASA/Joel Kowsky)】

スターライナーの有人飛行試験ミッションが成功すれば、審査の後に運用ミッションへ移行することになります。

関連記事:新型宇宙船「スターライナー」着陸成功! 実用化に向けて一連の試験目標を達成

Source

  • Image Credit: JAXA, Amazon, NASA, Polaris Project, NASA/Joel Koesky
  • Space.com \- These are the space missions to watch in 2023

文/出口隼詩

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