漆黒の宇宙空間と青い渦。棒渦巻銀河「NGC 6956」

【▲漆黒の宇宙空間を背景にして、青く輝く渦巻きが美しさを際立たせている棒渦巻銀河「NGC 6956」(Credit:NASA, ESA, and D. Jones (University of California – Santa Cruz); Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America))】

こちらはハッブル宇宙望遠鏡によって捉えられた棒渦巻銀河「NGC 6956」です。漆黒の宇宙空間を背景にして青い渦巻きが輝き、美しさを際立たせています。棒渦巻銀河とは、中心部に棒状の構造が見られる渦巻銀河のこと。NGC 6956は棒渦巻銀河の一般的なタイプで、いるか座の方向約2億1400万光年先に位置しています。

関連:今も昔も美しい姿。ハッブルが撮影してきた棒渦巻銀河「NGC 2903」

NGC 6956では「セファイド(ケフェイド)変光星」が確認されています。セファイド変光星(ケフェウス座δ型変光星とも呼ばれる)は、明るさが周期的に変化する脈動変光星の一種です。その変光周期と真の明るさ(光度)は相関していて、変光周期が長いものほど真の明るさも明るくなります。「周期-光度関係」として知られているこの関係から真の明るさを求め、観測された見かけの明るさと比較することで、セファイド変光星までの距離を求めることができます。

また、NGC 6956では「Ia型超新星も見つかっています。Ia型超新星は連星系で起こる超新星爆発で、伴星の恒星から主星の白色矮星へと徐々にガスが移動史し、白色矮星の質量が一定の値(チャンドラセカール限界質量)を超えた時に爆発が起きます。このような超新星は、その明るさと時間の経過にともなう減光の速度をもとにして、地球からの距離を計算することが可能です。

科学者は「セファイド変光星」と「Ia型超新星」の観測データを、宇宙の膨張率を表す「ハッブル定数(※)」の算出方法の1つとして活用しています。この2つの天体は、現代の宇宙論研究で欠かすことのできないツールであり、その両方が観測される銀河もまた重要な研究対象となっているのです。

※…ハッブル定数とは、遠方の銀河までの距離と銀河が遠ざかっていく速度が比例していることを示したハッブルの法則で用いられる定数のこと。

Source

  • Image Credit: NASA, ESA, and D. Jones (University of California – Santa Cruz); Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America)、NASA/JPL-Caltech/Carnegie
  • NASA \- Hubble Captures Majestic Barred Spiral
  • NASA/Spitzer \- Cepheids as Cosmology Tools

文/吉田哲郎

© 株式会社sorae