全国でも異例、ピッツァ職人が客員教授就任 福井県の「バードランド」小田原学さん、立命館大学で講義

立命館大学の客員教授に決まった小田原学さん=福井県坂井市三国町緑ケ丘4丁目のバードランド

 福井県坂井市三国町で、本場のナポリピッツァを味わえる店として知られる「バードランド」のオーナーでピッツァ職人の小田原学さん(59)が、立命館大学食マネジメント学部(滋賀県)の客員教授に就任することが決まった。同学部によるとピッツァ職人が客員教授になるのは全国でも異例という。小田原さんは「本物のおいしさや、その味が育まれたイタリアの文化を知ってほしい。仕入れから調理、販売までができる学生を育てていきたい」と意気込んでいる。

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 小田原さんは同学部創設当初の2018年から毎月、依頼を受けてピッツァに関する講座を開いている。継続して職人の知識を学問に取り入れていこうと、同大学が客員教授に推薦し、昨年11月に決定。4月から正式に、イタリア食文化を研究するゼミで月に1~2回の講義を行う。

 小田原さんは1989年に喫茶店としてバードランドをオープン。雑誌のナポリピッツァ特集を読んだのを機に1997年から6年間、毎年1カ月はイタリアに渡り、本場の約40軒を食べ歩き2軒で修業した。店に石窯を設置し、2002年には「本場の味を提供する店」としてイタリアの「真のナポリピッツァ協会」から認定を受けた。

 講義では、座学から実践まで幅広く教える。イースト菌の発酵作用や小麦粉の種類によってできる生地の違い、現在のピッツァになるまでの歴史も学ぶ。

 実践では、生地作りから焼き上げまでを行う。要領よくできるまで最低半年間はかかるという生地の延ばし方では、空気を出し、均等な厚さに成形する方法を学ぶ。輻射熱や反射熱などの原理にも触れながら、窯の扱い方、焼き方も会得し、おいしいピッツァを作れる技術を身に付ける。

 同協会と親交が深く、同大学への石窯設置を提案した同学部の石田雅芳副学部長は「200年の歴史がピッツァにはある。いにしえの食の歴史に敬意を払い、職人が現場で培った専門的な知識を取り入れ、学問としての食を全方向から研究していきたい」とした。

 ピッツァ作りの魅力について「全て手作業で、感覚的に作るのが面白い。経験値が物をいう」という小田原さん。「修了した学生は、どこの店でも働けるレベルにするつもり。また、生産者に感謝しながら、おいしい料理を作れる人材を育てたい」と語った。

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