“ウクライナ避難民”のいま…言葉や生活費など問題山積も、心の支えとなっているのは…

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、“ウクライナ避難民の今”をキャスターの田中陽南が取材しました。

◆ウクライナから2,193人の避難民が日本に

2022年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻。それから約10ヵ月、12月21日時点で、2,193人のウクライナ避難民が、日本で生活を送っています。戦争が長引くなか、ウクライナから避難してきた人々は今、どんな思いを抱えて生活しているのか。今回、田中は3月にウクライナから都内に避難してきたエウゲニアさんに話を伺いました。

エウゲニアさんは夫、息子、両親とともにウクライナ東部ドネツク州に住んでいましたが、ウクライナ侵攻で自宅の屋根に穴が開き、近所でも多くの被害が。そこで、日本人と結婚し、日本で暮らしていた妹・ビクトリヤさんを頼り、日本に避難してきました。

日本に住んでみて一番困っていることを聞いてみると、やはり"言葉の壁”だとか。日常生活で使う言葉は覚えたものの「日本語が覚えづらい。日本語学校に行ったけど、日本語は難しい」と話します。現在は、日本語ができるビクトリヤさんが家族の通訳を担当しています。

その他にも障壁はあり、ひとつは家の問題。今は都営住宅に住んでいるものの「ずっとここに住めるとは思っていない。引っ越しするかもしれない」とエウゲニアさん。また、息子も日本語が不慣れで、学校とは別に授業が必要となり、エウゲニアさんは「頑張らないといけない」と語ります。

さらには金銭的な不安も。日本での生活で受けている支援金、年間1人100万円では足りないことから、生活費を補うべく、エウゲニアさんは吉祥寺にウクライナ料理店「Babusya REY(バブーシャ レイ)」をオープン。

バーを間借りして土日祝日の昼に営業しており、そこではエウゲニアさんと彼女の母が腕を振るった故郷ウクライナの家庭料理が味わえます。

お客さんの反応は上々で「たくさんのお客さんが来て、みんなウクライナをサポートしたいと思っている」と実感を語るエウゲニアさん。以前は日本に友達や知り合いはいなかったものの、オープン後はレストランにたくさんの日本人とウクライナ人の避難民も訪れ、友達が増加。

とりわけウクライナから逃れた人々は、故郷の家庭料理を渇望していたそうで「食べるとウクライナのことを思い出すし、遠く離れた国・日本で自分のホーム(故郷)を感じています」と感慨深そうに語ります。

ウクライナ避難民のお客さんのなかには、お店を訪れて以降ファンになり、現在はアルバイトとして働く人も。ウクライナ料理を通して応援したいという日本人も続々来店し、生活費のために始めたお店でしたが、エウゲニアさんにとってはお客さんの声援が心の支えになっているそうです。

そんななか、ウクライナで戦争が長引くなかで不安も。現地には88歳の祖母が残っており、これからの季節ウクライナはとても寒く、爆弾が落ちれば電気やガスが止まってしまう可能性もあり、とても心配だと話します。

最後にエウゲニアさんはこれまで多くのサポートをしてくれた日本に対し「本当に感謝の気持ちしかない」と感謝しつつ、「一番の願いは、ウクライナでの戦争が終わること」といまだ終わりの見えない戦争の終結を望んでいました。

◆求められるはさらなるサポート、国だけではなく民間も

キャスターの堀潤は「一時的に避難されてきたみなさんが、こうしてお店まで開いて奮闘されているのは本当に頭が下がる」と敬意を示し、その上で「祖国に帰り、家族みんなで暮らせるような状況を国際社会として一刻も早くどうやって作ることができるのか、知恵を出し合いたい」とも。

また、エウゲニアさんが一番困っているという言葉の壁について堀は、「歴史を振り返れば中国残留孤児の方々が日本に戻ってきた際も最も大きかったのは言葉の壁で、それがネックのひとつとなり二世、三世と繋がっていくなかで、日本社会で生活基盤を築くのが難しく、いろいろな課題が残されていた」と話します。

そして現在も、例えば、海外にルーツを持つ子どもたちが公立学校のなかで言語がわからないまま取り残されている状況があるなど「ウクライナ避難民を通じて見えてくる今の日本の課題もある」との指摘も。

インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんは、エウゲニアさんのお店に興味を示すと同時に「そもそも日本は難民の受け入れがすごく少ないし、避難してきた外国人の方々が生活基盤を整えるのはすごく大変」と外国人の受け入れ体制が不安定な日本を憂います。そして、「日本全体として、例えば日本語を教える先生の地位の向上、人材育成などもしていかないといけない」とも。

政治プラットフォーム「PoliPoli」代表の伊藤和真さんは「命や暮らしより大事なものはないと思う」と語り、その上でウクライナ避難民への100万円の支援金に関し「自分たちの税金が、命を脅かされた方々のために使われているのはひとつ救いになった」と安堵。ただ、まだまだサポートが足りないという現状に「国だけのサポートでは足りないというところで、ウクライナを応援するために(エウゲニアさんの)お店に行く。僕はそうした側にいたい」と自身の立ち位置を確認します。

そして、アフリカの紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さんは「言語の壁は教える側の工夫も必要だし、我々の工夫、例えば、もっとやさしい日本語を広げるとか、そういったこともあるので、お互い歩み寄っていければ」と話します。

さらに、支援に関してもエウゲニアさんのお店に行くことに加え、「ウクライナ避難民の方を支援するふるさと納税もある」と紹介し、「そうしたものも利用しながら、今後、よりいろいろな人が支えられる仕組みになっていけば」と期待していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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