世界初「線虫がん検査キット」に人気殺到 藤沢市のふるさと納税返礼品

返礼品に追加後、寄付が集中している「線虫がん検査キット」

 藤沢市が昨年11月にふるさと納税の返礼品に加えた線虫がん検査キット「N-NOSE®(エヌノーズ)」に寄付が集中し、1カ月余りの間に1600万円を突破した。提供したのは、同市に立地する湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)に研究開発拠点を置くHIROTSUバイオサイエンス(本社・東京都)。がんの克服を目指す世界初のオンリーワンの技術が、寄付者を引きつけているようだ。

 N-NOSE®は、嗅覚に優れた体長1ミリ程度の線虫という生物が、尿中に含まれるがん特有の臭いを検知することを利用した世界初のがん検査方法。同社が2020年に実用化した。

 線虫は15種類のがん種に反応。早期がんのリスクを調べることができ、がん検診の入り口の検査としてこれまでに30万人以上が利用している。

 藤沢市は昨年11月22日から、寄付額5万円コースの返礼品としてN-NOSE®を用意。12月31日までに331セット分の寄付が寄せられた。同市のふるさと納税寄付額は2021年度、約1億8千万円で、1カ月強の短期間に特定の返礼品に対し1千万円を超える寄付が集まったのは初めてという。

 同市はふるさと納税の流出額が国から補填(ほてん)されない不交付団体だが、同年度の流出額は約17億9800万円と過去最高を更新。かねて流出防止、寄付の確保に努めてきた。

 一方、同社は「拠点がある藤沢市に恩返しをしたい」(広津崇亮代表取締役)との思いで、返礼品への採用を申し出たという。同社は、N-NOSE®の次世代検査として同パークで研究開発を進めてきた早期すい臓がん検査「N-NOSE®plusすい臓」の実用化にも成功。22年11月から先行予約を開始した。

 広津氏は「創業以来、N-NOSEの実用化、がん種特定検査の開発に全力を注いでいたが、このスピード感で実現できたのは、まさに藤沢市の湘南アイパークに拠点を構えたことによる」と説明する。

 N-NOSE®を巡り、寄付の窓口である「ふるなび」のサイトには、「簡単に多くのタイプのがんの有無が分かり、非常に便利」や、「簡単、高精度、安価、全身網羅的」といった利用者ニーズに応えた技術を評価する声が多く寄せられている。

 広津氏は「われわれの取り組みが市の地方創生の一助になれば」とコメント。市財政課は「人気の返礼品は天然酵母パンや湘南しらすなど食品関係が多く、革新的ながん検査キットの反響の大きさに驚いている。これからも魅力ある地場産品を用意し、寄付額を増やしたい」としている。

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