『ベトナムの支援活動』迷わず始めて続けています!/北九州ベトナム人協会・松下真和さん

西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。

ボランティアのきっかけ

甲木:おはようございます。西日本新聞社 ナビゲーターの甲木正子です。

梁:同じく、西日本新聞社の梁京燮です。

甲木:梁さん、ボランティアは何かやっていますか?

梁:今はしていませんが、大学生の時に国際ボランティアをしていまして、いろんな国籍の人と有機農家の家に泊まり込みでお手伝いをしたことがあります。

甲木:そうなんですね。今日のゲストの方も凄いボランティアをされている方です。早速、お招きしたいと思います。ベトナム支援のボランティアをしていらっしゃる、松下真和さんです。よろしくお願いします。

梁:よろしくお願いします。

松下:よろしくお願いします。

甲木:松下さんは調剤薬局・九州メディカルの平成薬局という所の薬剤師さんなんですけど、なぜ海外のボランティアを薬剤師さんがやっているのか、まずそこからお聞きしたいと思います。

松下:薬剤師になって4年目に、JICA(ジャイカ)が行っている海外青年協力隊事業に参加したのがきっかけなんですが、その6年くらい前に、大学生の構内に貼ってある海外青年協力隊のポスターを見て、そこでまず1回目の雷に打たれたといいますか、ビビっときまして、これだ!と思ってすぐ説明会に行きました。そこで経験者の方の話しを聞いた時に、まずは薬剤師を4年間してくださいと言われまして、4年間薬剤師の仕事をしてJICAに申し込みました。

甲木:最初は、どこの国へ行かれましたか?

松下:パプアニューギニアですが、8割くらいが苦しい体験で、2割くらいが楽しい体験でした。

甲木:そこでは、どのような活動をされていましたか?

松下:2つありまして、1つは日本で言う保健所に勤務して、地域の医療施設を巡回し在庫管理の仕方とか、薬の正しい使い方の指導と、もう1つは近所に大きな病院がありまして、そこの薬剤部の人手が足りないので、そこに週に2日か3日、薬剤師として勤務していました。

ベトナムを選んだ理由

松下:帰国後は市内の調剤薬局で仕事をしていましたが、またボランティアをしたい気持ちが少しずつ出てきました。そんなある日、テレビで、ベトナムにツーズー病院という産婦人科の病院があり、障害のある子どもたちを支援する施設で平和村という所があるのを見て、そこで2回目の雷に打たれまして、「これだな」と思いました。ツーズー病院というのは、日本の医療チームとベトナムの医療チームが協力して手術をした時の患者だった、ドクさんが勤務している病院なんです。それでいきなりその病院へ行っても相手にしてもらえないだろうと思って、まずドクさんとお友達になろうと思いまして、ベトナム人の友達に手伝ってもらい平和村へ行き、ドクさんを探しました。まずは、手土産を持って行って、ドクさんとお友達になりたいと伝え、ドクさんに「焼き肉は好きですか?」と話をしました。

甲木:いきなり焼き肉ですか?(笑)

松下:はい。とりあえず、接待から入りました。それでドクさんとお友達になれましたね。

梁:ドクさんも、焼き肉によく行ってくれましたねー(笑)

松下:それからドクさんの上司であるドクターを紹介してもらい、平和村で勤務できるようになりました。

平和村での仕事

甲木:そこでは、どのようなお仕事をされていましたか?

松下:2週間でしたが、手が無いお子さんにお粥を食べさせたりなど、補助的な仕事をしていました。とりあえず子どもたちと一緒に過ごして、自分がどのような気持ちになるかを知りたいという事もありました。

甲木:実際どんな気持ちになりましたか?

松下:会話とかは出来ないのですが、感覚的には自分も助けられているみたいな感じでした。不思議な話しかもしれませんが、自分が生まれる前に持っていた、今度はこういう人生を送るのだ、という使命感的な感覚をもらったような気になりまして、そう考えると、平和村の子どもたちは自分で障害を選んで生まれて、障害がない人たちと一緒に何かを学ぶことを人生の使命にするなんて、どんなに凄い魂なんだろうと思いました。彼らに対してリスペクトしかないですね。

甲木:ストリートチルドレンの支援などもされているんですよね。

松下:そうですね。ストリートチルドレンと聞くと、家も親もいなくて道に住んでいるという感じなんですけど、ベトナムのストリートチルドレンというのは少し考え方が広くて、家も親もありますが経済的に理由があるので、学校へ行かずに道で仕事をしている、そういう方も含まれます。

甲木:松下さんも、いつもベトナムに行くことはできないでしょうから、例えばお金を送るという支援をされるのでしょうか?

松下:そうですね。基本的には資金を送るような活動をしていましたね。

甲木:薬剤師をしながらボランティアとの両立ってすごく大変そうですが。

松下:そうですね。趣味みたいな感じでしたので続いたんだと思います。

甲木:結婚していらっしゃいますが、ご家族は理解されていましたか?

松下:結婚して2年目のときまでボランティアの事は言っていませんでした。その頃からこの人はこういうタイプだと分かってくれるようになりました。

甲木:心が広いですね。

松下:本当に助かっています。

梁:平和村で、松下さんがお子さんたちをリスペクトしているという事を聞いて、私はそういう松下さんをリスペクトをしますし、奥様も松下さんをリスペクトしていると思います。

日本語教師としてのベトナム生活

甲木:テレビで見たツーズー病院を見てベトナムへ行きたくなり、ストリートチルドレンの支援などさまざまな活動をされた後、また、ベトナムへ行きたくなったとか?

松下:はい、それまでは日本で生活をしながら年に2回か3回ベトナムへ行くような生活だったんですけど、ベトナムに住んでみたいという気持ちは以前からあり、現地で薬剤師の仕事を探しましたがなくて、そんな時に3回目の雷が落ちまして…。

梁:また、落ちたんですか?

松下:落ちたんです。ぼーっとインターネットを見ていたところ、日本語教師と書かれたバナー広告が出てきたんです。クリックしたら、「日本語教師には専門の大学を出ていなくても誰でもなれます」とのことで、「…これか。…来たな」と思いまして、調べたら、北九州にも専門学校があることがわかって、1週間後には入学金を全額振り込んでいました。420時間授業を受けたら日本語教師になれるというものでした。行動は早かったです。毎週土曜・日曜に受講し、丸1年かけて日本語教師の資格を取り、すぐベトナムへ行きました。現地で日本語教師をやっている時期は、教師一色の生活でした。毎日授業をやって、うまくいかなかったところを手直しする、その繰り返しをずっとやっていましたね。2年間住んでいたらベトナム人の暮らしが見えてきて、それまでの自分は、大きな目標を立てそれに向かって頑張る事が良いと思っていましたが、彼らの生活を毎日見ていたら大きな目標もなく、家族を大事にして日々を一生懸命生きているんですね。その生き方をなんて美しいだろうと思い、先の事を考えることより目の前の事に一生懸命になり、そこに集中することが大切なんだということを教わりました。

市民と会社でコラボ

甲木:ベトナムでの生活は2年間で終わって帰国されたという事ですね。九州メディカルに就職したのはそれからですか?

松下:そうですね。

甲木:今は、九州メディカルの方も一緒にボランティアされているんですよね。

松下:はい。自分のボランティア活動を、もっといろんな人に体験してほしいという気持ちがあったので、会社の同僚に提案してこういうボランティア活動を一緒にやってみませんか、と声かけしたら、50名以上の方が賛同してくれました。

甲木:そこでエコバッグなども作られたんですよね。

松下:そうですね。今度は社内だけでなくて一般の市民の方も参加できたらと思いまして、エコバッグの売り上げの一部を、ベトナムの子どもたちに使えるようにしようというコラボのような企画で、去年の7月から販売するようになりました。

甲木:西日本新聞にも記事がありましたよね。買いたい人はどのようにしたらいいんでしょうか。

松下:九州メディカルの店舗でもよいですし、フェイスブックで『九州メディカルまごころプロジェクト』を開いていただいて、枚数と住所などを記入して頂くと、送料無料で郵送しています。

甲木:お話を聞いていますと、ご自身の収入もつぎ込み、単に善意というのを超えているような気がしますが、原動力ってなんですか?

松下:人のために何かするのが好きというのがあるんですよね。例えば旅行先でお土産を選んでいる時に相手が喜んでいる顔を想像しながら買い物をするのが好きで、元々持っている気質なんでしょうね。ボランティアも長く活動して思ったんですけど、自分を犠牲にしてもだめで、好きじゃないとだめだと思うんです。よく、目標はなんですがとか聞かれますが、「世界平和です」と言っているんです。私の場合は自分らしく生きることで世界平和に貢献できると思っているので、こういう活動をしています。

将来の夢

甲木:凄いですね。このように忙しい松下さんですけど、将来に向けて夢があるという事ですが。

松下:今、考えている事は、もっとベトナム語を勉強してベトナムでお笑い芸人になる事です。そして、ベトナムの方を笑わせられる、そういう人生を送れたらいいなと思っています。

梁:それは、いいですねー。

甲木:奥様はご存じですか?

松下:知らないです。

甲木:でも良い事と思いますよ。壮大な夢ですよね。楽しみにしています。

梁:お話を聞いて、すごく勉強になりました。ありがとうございます。

甲木:今回は、九州メディカルの薬剤師として働きながら、ベトナム支援のボランティアをしている松下真和さんにお話を伺いました。松下さん、ありがとうございました。

梁: ありがとうございました。

松下:ありがとうございました。

〇ゲスト:松下真和さん(北九州ベトナム人協会)

〇出演:甲木正子(西日本新聞社北九州本社)、梁京燮(同)

(西日本新聞北九州本社)

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