「サクマ式ドロップス」の佐久間製菓、「廃業」まであと10日に迫る

佐久間製菓本社の正面ウインドー(東京・池袋)

一時代を築いた老舗菓子メーカーが歴史の表舞台から姿を消す。「廃業」まで残すところ10日。文字通り、カウントダウンが始まったのが「サクマ式ドロップス」で知られる佐久間製菓(東京都豊島区)だ。

110年以上の歴史にピリオド

同社は2023年1月20日をもって会社を畳み、1908(明治41)年の創業から110年以上の歴史にピリオドを打つ。

サクマ式ドロップスといえば、イチゴ、レモン、オレンジ、パイン味など色とりどりのキャンディーが入った赤色の缶でおなじみ。幅広い世代に親しまれ、アニメ映画『火垂るの墓』で主人公の妹の好物として描かれたこともある。

廃業が明らかになったのは昨年11月。コロナ禍で販売が落ち込んでいたところに、原材料、エネルギー価格の高騰などが重なり、業績が悪化。決算公告によると、コロナ禍初年の2020年9月期に1億130万円の最終赤字に転落し、21年9月期、22年9月期はいずれも約1億5000万円に赤字幅が膨らんだ。この結果、22年9月期には債務超過に陥った。

佐久間製菓の本社ビル(東京・池袋)

M&Aの選択肢は?

本来であれば、同業他社の傘下に入る、あるいは投資ファンドなどの新たなオーナーに経営を委ねるM&Aも選択肢の一つだったはずだが、同社が選んだのは廃業の道。廃業は会社が自主的に企業活動をやめるもので、資金繰りに行き詰まり銀行取引が停止になるなどの倒産とは異なる。

佐久間製菓はキャンディー専門メーカーとして歩んできたが、看板商品のサクマ式ドロップスに続くヒット商品に恵まれず、将来展望を欠いていたのは事実。そこにコロナ禍が直撃し、自主廃業への背中を押したといえる。

廃業を受けて、今後は清算手続きに移る。会社が所有する資産の売却、債権(売掛金など)回収などを進め、すべての債務の弁済を終えることによって会社(法人格)が消滅する。弁済後、残存資産があれば、株主に分配される。

サクマ製菓とルーツが同じ

ちなみに、緑色の缶の「サクマドロップス」を製造・販売するのはサクマ製菓(東京都目黒区)。社名が示す通り、佐久間製菓とルーツは同じだが、戦後、再出発した両社の交流はほとんどなく今日に至るという。そのサクマ製菓は1970年発売のロングセラー商品「いちごみるく」の製造元でもある。

文:M&A Online編集部

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