アルゴリズムは開示すべき!? 食べログ裁判から考えるインターネット業界の新潮流

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「GENERATION」のコーナーでは、食べログ裁判に見る“今後のグルメレビューサイトのあり方”と“アルゴリズム開示”について、視聴者を交えて議論しました。

◆食べログ裁判…アルゴリズムの開示は妥当か?

Twitterの「スペース機能」を活用して幅広い世代の視聴者に参加してもらい、Z世代・XY世代のコメンテーターと議論する「GENERATION」。この日のテーマは"食べログ裁判”です。

2019年5月、食べログが店の評点を算出するアルゴリズム(計算手法)でチェーン店の評点を下方修正。すると、焼肉チェーンを運営する「韓流村」の店舗の評点が大幅にダウンし、2020年に韓流村は食べログの運営元「カカクコム」に約6億4,000万円の損害賠償などを求め、提訴。そして2022年6月、東京地裁はカカクコムに約3,840万円の賠償を命じました。

食べログの評価方法は、利用者ごとに書き込む頻度や内容に基づく影響度を設定し、独自のアルゴリズムを組み合わせ、単純に点数を平均化したものではないということです。

今回の争点になっているアルゴリズムに関して、microverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんはまず世界的なインターネットの潮流について解説。

これまでアルゴリズムは開示しないことが前提でしたが、現在は変化しているとし、渋谷さんは「そもそもコンテンツを作っているのは僕ら(ユーザー)で、食べログも口コミを書いているのは僕ら。そして、情報提供をしているのは飲食店側ですが、情報提供者がフェアに報われない、評価されないのはおかしいというのが今の新しいインターネットの潮流で、なおかつ法律も同様に動いているのが現状」と話します。

ただ、実際に開示となるとサービス運営者側からするといろいろと問題があり、例えばアルゴリズムを開示したことでハッキングされ、評価点をコントロールされてしまう恐れがあると言います。

とはいえ、渋谷さん自身は「基本的にはアルゴリズム開示の流れは正しい。コンテンツを作っているユーザーがフェアに報われる世界が一番」と肯定したうえで、「サービス側が考えないといけないのは、フェアではない、買われたレビューなどの評価対象」と課題を示します。

例えば、レビューも実際に店舗で決済しているかを連動させたり、投げ銭のような形を導入し、お金を払ってでもいいと評価する店へのレビューを評価するなど「評価者の重み付けをすることが必要」と主張します。

◆民主的な方向に…次世代のインターネットのあり方とは?

世界的な流れとしては、4月にEUがデジタルサービス法(DSA)に合意しました。仲介サービスの透明性や事業者の説明責任を強化し、利用者の基本的権利を保護することが目的で、これを受けて、大手IT企業がアルゴリズムを公開する流れが促進。一方で、ユーザーや競合他社がアルゴリズムを悪用する可能性も心配されています。

こうした流れに対し、XY世代の金融アナリスト・戸田裕大さんは「私は歓迎。アルゴリズムは公開したほうがいい」と自身の見解を示します。

例えば、食べログの件では使う側ユーザーと食べログ、そして店舗と関係者が三者いるなかで、問題となるのはどこがどこに対して"優越的地位”にあるのかということ。今回のケースでは、食べログが店舗に対し優越的地位にあり、「店舗が食べログの評価によって売り上げが変わってしまうというところが問題視されている。せめて評価するなら評価の仕方をクリアにすべき」と主張します。

しかし、アルゴリズムはプラットフォーム側の権利でもあるという問題があります。これに対し戸田さんは「そこは知的財産権として登録した上で、誰かに貸与するという形も取れると思う」とし、さらに開示についても「ある程度店舗の方にわかるような開示の方法と、本格的に知りたい人向けに公開する内容、そこは本人確認などをして渡してもいいような気がする」と述べます。

平和教育を研究する東京大学3年生の庭田杏珠さんは、「お互いにとっての信頼性が重要」と言い、店舗側がアルゴリズムに対して不審に思わないよう「プラットフォーム側は透明性を担保する形で開示し、店舗もプラットフォーム側も両方が有益になることが大事」と意見します。

Twitterスペースに参加していた視聴者からは「レビューを第三者機関に任せる。第三者機関にプラットフォーマーのアルゴリズムを確認させ、その方向性を開示し、詳細な確認は第三者機関に任せればいい」という提案があれば、「そもそもアルゴリズムはユーザーが分析することは自由にできるので、わざわざ公開する必要があるのかという話もあるし、公開したら他のアルゴリズムを適用すればいいだけという話もあるので、正直この問題は意味があるのか」と疑問視する声もありました。

こうした視聴者の意見に、渋谷さんは「第三者の評価は確かに大事だと思うが、アルゴリズムの改訂は日常的にやられていることなので、そのたびに第三者が評価するのはサービス側の人間からするときつい」と率直な感想を語ります。

また、「経済合理的な観点で見たときに、何を持って不正とするのかは難しい。不透明な評価をし続ければ、飲食店側がプラットフォームから離れていく。これはプラットフォーム側から見ると収益減につながるので悪意を持っているわけではない」とプラットフォーム側を慮りつつ、その上で「プラットフォーム側が一番考えないといけないのはコンテンツ提供者たちに対し、フェアな競争ができる環境を用意すること」と指摘。

そして、そのフェアな競争環境を用意するためにアルゴリズムを公開し、改訂していくことは必須であり、今後プラットフォーム側がすべきは「アンフェアな評価というところのレビューをどう排除するか、その重み付けに関して方向性を提示し、ユーザーに合意を取るべき」と渋谷さん。

実際、「web3」など最新のインターネット界隈ではアルゴリズムを変更した際にはユーザーに公開し、同意を取るなどしているそうで「そうした新しい民主的なインターネットサービスの作り方が次世代なのかなと思う」とも。

戸田さんは、食べログ問題の今後について「食べログと店舗の関係が是正されるということが今回のポイントだと思うので、そこが是正される方向で動いていけば」と期待していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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