待望の対決

 史上最年少のプロ棋士誕生-がニュースになったのは中学2年生の秋だ。その年のクリスマスイブ、超レジェンドとの対戦となったデビュー戦を飾ると、皆が中学の部活を引退する翌年の6月まで、彼は一度も負けなかった▲初タイトルの「棋聖」は2020年、高3の7月。新型コロナウイルスの流行で夏の高校野球が中止になった年。それから2年余。現在は八つある将棋のタイトルのうち、五つを保持していて…▲と、彼の快進撃と自分史を重ね合わせて振り返る人もいそうだ。今年の「はたち」、2002年度生まれの皆さんにとって、最も有名な“同級生”の一人が将棋の藤井聡太五冠▲「成人の日」の昨日まで2日間、羽生善治九段を挑戦者として迎え撃つ王将戦7番勝負の第1局に臨んだ。新旧の第一人者がぶつかる一戦は、ファンばかりでなく、当事者の2人も実現を熱望していたに違いない▲将棋は中盤の難所をうまく抜け出した藤井さんが幸先よく1勝を挙げた。「予想にない手を指されることが多く、長考する場面が多かった」と局後の藤井さん。羽生さんも「(持ち時間の)8時間は長いようで短い」と述べたが▲互いに繰り返し長考に沈む姿は、将棋の勝ち負けも超えて2人だけの時間を楽しんでいるようにも見えた。第2局は21日から。(智)

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