日本刀を「打ち始め」 龍神村の刀工・安達さん

孫の宗佑君(右)と「打ち始め」をする安達茂文さん=和歌山県田辺市龍神村殿原で

 和歌山県田辺市龍神村殿原の刀工、安達茂文さん(64)=刀銘・龍神太郎源貞茂=は5日、新年の「打ち始め」をした。神棚に祈った後、日本刀作りの最初の工程である「玉へし」という作業をし、素材となる玉鋼(たまはがね)を真っ赤に熱して鎚(つち)で打った。

 安達さんは中学校を卒業してすぐ、刀工だった父の故・貞楠さんに弟子入りし、22歳で人間国宝の故・月山貞一さんにも師事。今年は日本刀作りを始めて50年の節目となることから、帰省中だった孫の安達宗佑君(9)も「打ち始め」に立ち会った。

 「玉へし」は熱して柔らかくした玉鋼を薄く平らに打ち伸ばす工程で、この日は午前9時半ごろから作業を始めた。安達さんは、炉に火を入れて松炭を燃焼させ、その中に玉鋼を入れて真っ赤になるまで熱した。玉鋼を取り出して台の上に置き、宗佑君が鎚で打つ作業を体験。その後、安達さんが機械を使って熱した玉鋼を打ち伸ばした。

 宗佑君は「これからもおじいちゃんの仕事を手伝いたいと思っていたので、良い勉強になった」と話した。安達さんは「今まで得たものを集約するのが、これからの時間だと思う。刀作りは、できないから面白い。若いときにあった焦りはなくなった。初心を忘れず、心新たにこの一年間取り組んでいきたい」と語った。

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