10年ぶりに山口で"復活"「DYNAMIC賢者の音」 辻本玲と「仲間たち」が1月22日にコンサート

 山口市文化振興財団(TEL083-901-2222)は今年、新シリーズ「DYNAMIC賢者の音」をスタートさせる。世界の第一線で活躍する、これぞ"賢者"だとうならせる若手演奏家を招くクラシックコンサートシリーズだ。入場料金はリーズナブルな設定で、彼らの素顔が伝わるようなトークも交えて進行。「若手ならではの躍動的でエネルギーのほとばしる鮮烈な生演奏を聞いてほしい」と、企画を担当する同財団の肥塚聡子さん。

 その初回となる「DYNAMIC賢者の音Ⅰ~辻本玲と仲間たち」が、1月22日(日)午後2時から、山口市民会館(山口市中央2)で開かれる。

 今回紹介されるのは、1982年生まれのチェロ奏者・辻本玲。生後4カ月から11歳まで米国フィラデルフィアで過ごした彼は、7歳からチェロを始めた。2006年に東京芸術大学を首席で卒業し、その後シベリウス・アカデミー(フィンランド)、ベルン芸術大学(スイス)に留学した。第72回日本音楽コンクール第2位および「聴衆賞」(2003年)、2007年度青山音楽賞新人賞、第2回ガスパール・カサド国際チェロ・コンクール第3位(日本人最高位、2009年)など、数々の賞も受けている。2011年に東京・サントリーホールなど5大都市でデビュー・リサイタルを開催。2019年にリリースしたソロCD「オブリヴィオン」は、「レコード芸術」誌の特選盤にも選出された。使用楽器は、NPO法人イエロー・エンジェルより1724年製のアントニオ・ストラディヴァリウスを、弓は匿名のコレクターより「Tourte」を特別に貸与されている。ソロ活動と並行して、サイトウ・キネン・オーケストラなど室内楽にも多数参加。日本フィルハーモニー交響楽団ソロ・チェロ奏者を経て、2020年12月よりNHK交響楽団首席チェロ奏者を務めている。

▲辻本玲

 そして、彼が絶大な信頼を寄せている、鈴木康浩(ビオラ、1976年生まれ)と津田裕也(ピアノ、1982年生まれ)も出演。5歳からバイオリンを始めた鈴木は、桐朋学園大学卒業後ビオラに転向。2001年よりドイツ・ベルリンのカラヤン・アカデミーで研さんを積んだ後、ベルリン・フィルの契約団員となり、2004年に帰国。現在は、読売日本交響楽団ソロ首席ビオラ奏者を務めている。津田は、2005年に東京芸術大学を首席卒業。その後、ベルリン芸術大学を最優秀の成績で卒業し、ドイツ国家演奏家資格を取得。第3回仙台国際音楽コンクール(2007年)で優勝、聴衆賞、駐日フランス大使賞を受賞。2011年のミュンヘン国際コンクールで特別賞を受賞。現在は、東京芸術大学准教授も務める。

▲鈴木康浩
▲津田裕也

 当日は2部構成。第1部は辻本のソロで、「白鳥」(サン=サーンス)、「チェロ・ソナタ」(フランク)などが演奏される。第2部は「仲間たち」とともに、「2つのオブリガート眼鏡付」(ベートーヴェン)、「クラリネット三重奏曲(ビオラ版)」(ブラームス)などのアンサンブルが奏でられる。

 前売り券は、一般3000円、高校生以下1000円、ペア券5500円で、山口市文化振興財団チケットインフォメーション(YCAM内、TEL083-920-6111)、同館、KDDI維新ホール、コンビニエンスストア設置端末などで購入できる。当日券(ペア券の販売はなし)は各500円高。未就学児は入場不可だが、託児サービス(有料、1月15日までに要申し込み)が用意されている。

 また、開演前の午後1時から30分間、同館エントランスホールでは、山口大学管弦楽部メンバーによる「ロビーコンサート」も実施。ディズニーやジブリなどの映画音楽からクラシックまで、0歳児から無料で鑑賞できる。

 「DYNAMIC賢者の音」は、2008年度から2013年度にかけて、肥塚さんが当時在籍していた島根県雲南市加茂文化ホール「ラメール」で、通常公演7回と「音楽祭」1回の計8回が開催された。企画・運営を担当していた彼女の出産・育児などにより中断していたが、肥塚さんは「いつか再開したい」との思いを持ち続けていた。2年前から同財団の所属となり、温めていたこの企画を、ラメールの承諾も得て、10年ぶりに山口市で“復活”することとなった。

 肥塚さんは、雲南市での開催を「このシリーズを通じて、さまざまな楽器や一流の演奏家に触れてもらうことで、特にクラシックに詳しくなくても『自分の好みを知ったり興味がわいてくれば』と思い、アーティスト選びからこだわってきた」と振り返る。そして「毎回演奏家が市内の学校での訪問演奏をセットで行い、時には地元の子どもたちがプロと共演したり、学生スタッフが手伝ってくれたりしたことが、彼らにとって貴重な経験となり、心に残ったり、中には将来の夢を見つけたり、何らかのものが残せたのではないかと思うし、そう願っている」と話す。

 今回も、前日の1月21日(土)に同館で開かれる「ニューイヤーバンドフェスティバル」へのゲスト出演(閉会式)や、中高生弦楽部への講習会などが行われる予定だ。

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