季節性うつで休職…生活費はどうすればよい? 公的保障と民間保険でどの程度まかなえるか

冬は季節性うつになりやすい季節といわれています。特に冬の間に雪が多い地方では、明るい日差しを受けられる日は限られており、暗い日が続くと季節性うつが起こりやすいようです。もしもうつ病で会社を休まなければならなくなった場合、公的な制度は受けられるのでしょうか? また、民間の保険で給付対象となるような商品があるのかなど、休職中の生活費をどう守るか考えます。


季節性うつ病とは?

季節性うつ病とは、「冬季うつ病」として、1984年に初めて報告された精神疾患です。秋から冬にかけてうつ症状があらわれ、春先になると症状が回復することを繰り返す、周期性が特徴の病気です。

就職や進学など生活環境が変わる春や、雨で湿度が高く不快感が増す梅雨頃、暑さが激しく室内で冷房の室内にこもってしまう夏など、季節にかかわらず発症の可能性はありますが、秋冬の発症が一番多いといわれています。

季節性うつ病は日照時間不足が原因であるといわれています。特にコロナ以降、屋内で過ごす時間が多くなり、日光に当たる時間が少なくなっています。日光不足は脳内のセロトニン分泌が減り、やる気がなくなるなどの症状があらわれ、うつ病になりやすくなるようです。

治療法としては、日照不足が原因なので人口光を使用して、1~2時間程度高照度の光を照射する療法があり、治療を続けると1週間ほどで改善する場合があります。他にも少し状態が重い場合は、症状が出始める秋頃から抗うつ薬を服用し、春にやめる薬物療法もあります。

季節性うつ病は比較的発症の原因がわかっていて、治療法もある程度確立しており改善もできる可能性が高い疾患です。症状が感じられたら、早めに受診しましょう。

うつ病で休職中の生活を守る公的保障は?

季節性うつ病の症状改善には、専門家の治療をしっかり受けるとともに、心とからだを休めることが必要です。医師から休業した方がいいという診断を受けた場合は、会社に迷惑をかけることが気になるかもしれませんが、業務を任せ、会社と相談し休職しましょう。

休職中の生活を守るための公的保障として、傷病手当金という制度があります。この制度は健康保険に加入しているひとが受けられる制度です。扶養を受けながらパートで働いているひとや、自営業主など国民健康保険に加入しているひとは受けることができませんので、注意が必要です。

傷病手当金は連続して4日以上休んだ場合に支給され、最長1年6か月まで受取ることができます。傷病手当金の日額は、標準報酬月額を30日で割った標準報酬日額の2/3です。標準報酬月額は誕生月に送られてくるねんきん定期便に記載されていますから、確認しておきましょう。

たとえば標準報酬月額30万円の場合、標準報酬日額は1万円。傷病手当金は標準報酬日額の2/3ですから、約6,666円になります。傷病手当金は非課税で所得税や住民税はかかりませんが、健康保険料は支払う必要がありますので、詳細は会社の担当者によく聞いておきましょう。

春になり回復傾向がみられる季節性うつ病なのであれば、一定期間の休職で復帰できる可能性もあるので、会社と相談しながら働き続ける選択もできるのではないでしょうか。

就労不能保険、原因が精神疾患でも対象の保険は?

近年、就労不能保険という商品が保険会社各社で発売されています。公的保障である傷病手当金は生活を支えるのに強い味方ですが、給料の約2/3の支給ですから、休職期間が長引いてしまった場合、経済的なダメージが予想されます。そのような不足分に備えるのが就労不能保険です。ケガや病気で働けなくなった場合、約束した保険給付金をお給料のように毎月支払ってくれます。

ただし、一般的に就労不能保険の支払要件は、ケガや病気で障害状態に相当する場合に支払いが開始されることが多く、回復が見込まれない状態になった時に支払われますので、今回のテーマ、季節性うつ病のような短期で季節が変わると回復する病気では支払対象になりません。また、精神疾患は原則対象外としている保険会社が多いので、そもそもうつ病は長引いたとしても対象外です。

数は少ないですが、精神疾患による就労不能に備える特約を準備している会社もあります。おもに一時金を支払うタイプで、毎月定額を払う特約ではありませんが、ストレスの多い現代においては、精神的ダメージを受けてしまうことは誰にでも起きることです。不測の事態に備え、特約を準備しておくことも考えてみましょう。

どの病気にも共通していえることですが、季節性うつ病を予防するには、午前中に起床して自然の光になるべく多くあたること、バランスの良い食事をとること、ひとりで悩みを抱え込まないことだそうです。体調を整え、長い冬を乗り切りましょう。

参考文献:季節性うつ病 (講談社現代新書)

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