雨水をためて洪水対策、災害時の生活用水にもなる“都市のミニダム化”

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、“都市のミニダム化”をキャスターの田中陽南が取材しました。

◆墨田区で実践される"都市のミニダム化”とは?

近年、台風災害や線状降水帯による豪雨など都市部でも冠水、川の氾濫など水害が目立つようになってきました。そこで今回は、そうした水害対策に取り組む墨田区の市民団体を田中が取材。「雨水市民の会」の高橋朝子事務局長に話を伺いました。

高橋さんとともに田中が向かったのは、住宅地の路地裏。そこには井戸のようなものがありますが、それは「路地尊」なるもの。

この路地尊とは、雨水を地下にためるタンクで、地下には約3トンもの雨水が貯水でき、ポンプで汲み上げることでいつでも利用可能。

現在は、墨田区内21ヵ所に設置されており、普段は植物の水やりや子どもの水遊びなど、飲み水以外の生活用水として使われているそうです。

田中が実際に使ってみると「かなり軽い力で出ますね、これは子どもでも簡単に扱えますね」と感想を口にします。

雨水をためる方法は他にもあり、「天水尊」もそのひとつ。これは家庭用の雨水タンクで、約200リットル分の雨水がためられ、蛇口をひねればたまった雨水を使うことができます。路地尊より貯水量は少ないものの、墨田区内の公園や家庭などに300基以上も設置されているとか。

高橋さんによると、墨田区が雨水をためる取り組みを始めたのは、1980年代に"都市型洪水”と言われる雨水で下水道が溢れる洪水が多発したから。墨田区は荒川と隅田川に挟まれ、さらには海抜0メートルを下回る場所が複数あり、昔から河川の氾濫や都市型洪水が起きていました。

そこで高橋さんたちは、洪水被害を防ぐために墨田区と協力し、雨水の排出を抑える取り組みを開始。

高橋さんは「雨を少しでもいいからためて、下水道に流す分を少なくすることで、下水道がパンクしなくて済む。ためた雨水は使えるので、それを使ってもらって"都市のミニダム化”があちこちで役に立ったら」と切望します。

◆水害対策と同時に、断水時には生活用水にも

他にも墨田区では、区役所などの公共施設や大規模施設に貯水タンクを設置することで雨水の排出量を抑え、水害のリスクを軽減。例えば、東京スカイツリーは2,635トン、両国国技館は1,000トンもの貯水ができるとか。

また、家庭に設置可能な天水尊についても、区が助成金を出して設置を促しているそうです。

高橋さんに今後の雨水の利用法について聞いてみると、「2022年9月の静岡での豪雨災害の際、給水車は来るものの水が重たくて運べない家庭が結構あった。そうしたときに雨水タンクがあればトイレの水などは雨水で流すことができる。天水尊のようなものが各家庭にあるというのが一番いい」と語ります。

◆"流せば洪水、ためれば資源” 災害対策かつ資源の有効活用も

雨水タンクは洪水対策だけでなく、断水時にはトイレやお風呂に使え、濾過すれば飲料水としても活用できるなど、さまざまな場面で使える貴重な資源に。"流せば洪水、ためれば資源”をモットーに、高橋さんたちは今後も"都市のミニダム化”に向け取り組みを拡大していくそうです。

こうした取り組みにキャスターの堀潤は「素晴らしいですね!」と評価。

Health for all.jp代表の茶山美鈴さんも「災害対策ができ、かつ資源の有効活用もできるというところでもすごく面白い」と興味を示し、省エネ、節約にも大きく繋がるとあって、都内をはじめ全国でこうした取り組みが広がることを期待します。

インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんも「面白い取り組み。しかも、市民の方々の行動によって成り立ち、それが行政と繋がっていることもすごい」と感心。

そして、今後も都市型洪水が考えられる一方で、水不足も懸念されるなか、墨田区の取り組みはどちらにも対応できるため「とてもお手本になる事例」と注目します。

また、番組Twitterの「スペース機能」に参加していた視聴者からも「とても感心した。素晴らしい取り組みだと思う」という声が。さらに、今夏水害に見舞われた静岡県の方からは「災害時には断水で苦労していた方がいたが今の取り組みは大変参考になった。静岡は安倍川の伏流水もミニダムと合わせて活用すればいいのではないか」という提案もありました。

取材した田中は「この取り組みが、いろいろなところに広がってほしい」と望んでいました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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