還付申告がスタート、対象になるのはどんな人?早く申告するメリットとは

新しい年を迎え、1月4日(水)から国税庁のウェブページに、令和4年分の確定申告に係る情報が公開されています。

国税庁「令和4年分 確定申告特集」

「確定申告」という言葉は、事業を営んでいる個人事業主の皆さんには馴染みの言葉かもしれませんが、給与収入のみの方にとっては、あまり耳慣れない言葉だと思います。そんな給与収入のみ、または少し副業をしている場合など、確定申告することで税金が返ってくるケースについて、お笑い芸人で本物の税理士である税理士りーなが解説します。


「還付申告」とは?

皆さんの収入に係る税金は国に納める「所得税」と、住んでいる地域に納める「住民税」の2種類です。

給与のみの収入で完結する方は、所得税については年末調整の時に計算され、同じデータが住民税にも反映されて各自治体で納付書が作られます。年末調整で税金の計算が完結しない方は、1月から12月分の収入や控除の内容を税務署に「確定申告」という形で提出して、正しい所得税の金額を「確定」させる手続きが必要になります。その確定申告のデータが住民税に反映されるという流れです。

この確定申告ができる期間というのは決まっていて、翌年の2月16日から3月15日までなのですが、確定申告の中でも「還付申告」は年明けすぐから提出できることになっています。

この、還付申告とはいったい何なのでしょうか? 「還付」つまり税金が返ってくる申告のことを「還付申告」と言います。

例えば、年末調整の計算結果が「10万円所得税を納付する」という結果だったのに、扶養控除をつけ忘れていたなど、年末調整の際の税金の計算が間違っていて、「ちゃんと計算し直したら所得税は6万円でよかったので4万円ほどの税金が返ってくる」という場合は「4万円還付される還付申告」ということです。

日本では「源泉徴収」と言って、取り漏れの無いように給与や報酬などから、事前に少し多めの所得税を引いてから、給与や報酬を支給しようというルールがあります。そのため、ざっくり多めに引かれた源泉徴収税額を、ちゃんと確定させて、その税額を正しく精算する手続きが必要です。それが、給与のみの方の場合は年末調整なのですが、年末調整だけで精算が済まないケースがあります。詳細は後述しますが、控除が追加されることで還付申告になる代表的なケースを以下に挙げます。

・医療費控除を受けたい
・住宅ローン控除の一年目
・ふるさと納税でワンストップ制度を使っていない
・年末調整に控除などの資料が間に合わなかった
・扶養や配偶者の収入を確認したら扶養の範囲内で、年末調整で受けなかった控除を受けられることになった

また、1年の途中で退職して、再就職をしていない方は年末調整をしていないため、源泉徴収税額がちょっと多めに引かれただけで終わっていて、ちゃんと税金を計算する「確定申告」をすることで、税金が還付されるということがあります。転職先での年末調整で「前職分の源泉徴収票」を提出できなくて、トータルの金額で年末調整がされなかった場合も確定申告が必要になります。

面倒でそのままにしていたら、余分な税金を納めたまま放置することになり、とっても「嘆かわしい!」ですね。

給与以外の還付対象となる収入

また、源泉徴収で引かれ過ぎた税金を取り返すことができるのは、給与収入がある方だけではありません。国税庁によると、作家に原稿料を支払う場合や、大学教授などに講演料を支払う場合などは、「報酬」として所得税を源泉徴収しなければなりません。

弁護士や公認会計士などの士業、スポーツ選手やタレントなどもこれに該当します。私も松竹芸能から入るタレント報酬はキッチリ源泉徴収されていますし、プロだけではなく、一度だけ「原稿書いてください」とか「講師としてしゃべってください」と依頼を受けた方もこの制度が適用されます。

つまり、これらの方々は、報酬の金額の10.21%が源泉所得税として事前に引かれ、残りの報酬が支給されるということです。この10.21%という税率はざっくりとした税率ですので、本来のその人の税率ではありません。

確定申告でちゃんと計算する場合、所得税は一番低い税率なら5%からスタートします。
「所得 − 控除」の引き算をして残った金額が、税率をかけることになる「課税される所得金額」になります。この課税される金額が195万円までなら税率が5%のところだけで収まります。つまり、この範囲内で収まる方は、10.21%は納めすぎということになりますので、申告をするとその分が「還付」されることになります。

まだそんなに多く稼いでいないフリーランスの方は、申告の必要がない金額でも、このような還付を受けることでかなりの金額が手元に入ることがあります。還付しそびれると「嘆かわしい!」ですね。

以前、先輩芸人さんの申告の相談を受けた時のことです。

儲けが少額だからと、過去3年分を確定申告しておらず、初めて確定申告をされました。なんと、毎年5万円ずつの還付を受けて、15万円もの臨時収入が入ったと喜んでおられました。その先輩は「なんで今までしてこなかったんだろう……これから毎年、確定申告します!」とおっしゃっていました。なんて……喜ばしい!

控除が追加されることで還付申告になる代表的なケース

先述したように、確定申告で「控除」が追加される場合は、税額が減るので「還付申告」になります。代表的なケースについて見ていきましょう。

・医療費控除を受けたい場合
医療費控除は年末調整では行えず、自分で1年分の医療費の領収証をかき集めて申告しなければなりません。同一生計の家族分を合計でき、共働き夫婦など扶養の範囲内でなくてもOKです。

トータル10万円超えていれば医療費控除が受けられます。家から病院までの交通費も足し忘れないでください。医療費控除を受けられる方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

・住宅ローン控除の一年目
昨年、住宅ローンを組んで新居に住み始めた方や増改築された方は「住宅借入金等特別控除」という控除があります。これは、住宅ローンなどを利用してマイホームを新築、取得や改築などしたときに、そのローン残高に応じて税金の控除が受けられる制度です。

最初の年は、その住宅ローンが本当に控除の対象かどうか内容を細かくチェックされるため、提出しなければならない書類があり「所得税の確定申告書」に必要事項を記載して、指定の提出書類と一緒に提出をしなければ1年目の控除を受けることができません。

  • 住宅ローン借入残高証明書
  • 土地建物の登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 建築請負契約書、売買契約書のコピー(土地と建物両方の取引がわかるもの)
  • 住宅性能を示す書類(必要な場合のみ)

これらをもとに「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」を作成して、確定申告書に添付して提出します。2年目以降は年末調整で、下記2つを提出するだけでOKです。

(1)年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
(2)住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(住宅ローン残高証明書)

・ふるさと納税でワンストップ制度を使っていない
ふるさと納税は返礼品をもらい住民税の控除が受けられる制度で、給与のみの方は「ワンストップ制度」の手続きをしておけば確定申告をする必要はありません。しかし、寄付先の自治体が6カ所以上になる場合や、医療費控除を受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合は「ワンストップ制度」の手続きが取り消されてしまいます。

この場合は、確定申告書の「寄附金控除」という手続きが必要になります。これをしなければ控除が受けられず、ただ寄附しただけのイイ人で終わってしまって「嘆かわしい!」ですね。忘れずに控除を受けてくださいね。

・年末調整に控除などの資料が間に合わなかった
「生命保険の控証明書を失くしてしまって年末調整に間に合わなかった」ですって?

なんて……嘆かわしい!

でも大丈夫、年末調整の結果として受け取った「源泉徴収票」と控除証明書を持って確定申告を行えば、受けそびれた生命保険料控除が受けられて税額が減ります。その分の還付を受け取ってください。

・扶養控除や配偶者控除の訂正
年末調整では扶養家族を書かなかったけれど、1年を終えて扶養や配偶者の年入を確認したら「扶養の範囲内で収まっていた!控除を受けられるじゃん!」なんて…喜ばしい!年末調整で受けなかった控除を受けられることになったら、確定申告して控除をしっかり受けましょう。

確定申告には、給与収入がある方は「給与の源泉徴収票」をご用意ください。またマイナンバーカード(または個人番号の通知カード + 免許証などの身分証明書)も必要です。控除ごとに必要な書類が異なりますので、必要書類を確認してキッチリと揃えた上で、スッキリと確定申告に臨んでくださいね。

控除を受けるなど、それぞれの手続きが必要な方は、国税庁のウェブサイトで詳細を公開しています。

また、上記控除のうち住宅ローン控除以外は「所得控除」と言って「スマホ申告」の利用が可能です。政府広報が出している確定申告のまとめサイトには問い合わせ先なども掲載されています。

過去の年分について確定申告自体をしていなかった場合は、5年分まで遡ってできます。その年の確定申告をしていなかった場合、平成30年分については、令和5年12月31日まで申告することができます。振り返ってみて「あの時の医療費控除していなかったな」とか「結局扶養の範囲内だった」という年があれば、平成30年分以降のものをしっかり洗い出して申告してみてください。


還付申告は、早く申告すると還付税額が早く振り込まれます。もともと自分がもらうべきだった税額を取り返すとはいえ、臨時収入のようで嬉しいですよね。

還付申告は、もう受付開始しているので、早くゲットしてそのお金を有効活用し、年明け早々「喜ばしい!」生活を送ってください。

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