潜伏キリシタンの遺産 「阿古木古道」復活へ 寄付募集 五島・奈留島の柿森さん

柿森さんが整備を計画している古道=五島市奈留町

 長崎県五島市奈留島で、かつて潜伏キリシタンが歩いた古道を復活させようと、元長崎市職員の柿森和年さん(76)が寄付を募っている。柿森さんは「潜伏キリシタンの歴史に思いをはせながら、自然の癒やしを感じる巡礼道にしたい」と構想を語る。
 奈留島は、キリスト教が禁じられていた江戸時代、長崎市外海地区などの潜伏キリシタンが海を渡り移住。1873年の信仰解禁後も、潜伏時代の信仰形態を続けた人も多かった。
 柿森さんは奈留島出身で、潜伏キリシタンの子孫。長崎市役所を定年退職後に帰郷し、2008年に自宅兼資料館を建てて島に残る信仰文化を研究。昨年、隣に「阿古木隠れキリシタンの里 浜辺の資料館」を増築し、貴重な資料を展示している。
 今回整備を計画しているのは、古道の一部に当たる阿古木地区から柿浦地区までの約1.6キロ。江戸時代の1800年代初頭ごろに潜伏キリシタンが切り開き、役人に気づかれないように信仰の集まりに使った。集落をつなぐ生活道路としても約50年前まで利用していた。別の道路ができて廃道となり、現在は倒木が道をふさぎ雑草が生い茂っている。
 道幅は約2メートルで石垣が残っており、木々の間からは海を眺めることもできる。整備には地元自治会の理解を得ており、クラウドファンディングで「阿古木古道を巡礼道に」支援プロジェクトとして19日まで寄付を募集中。2、3月に倒木を除去するなどして、4月ごろの開通を目指している。
 柿森さんは「古道は潜伏キリシタンが残した遺産。研究者や観光客に訪れてもらい、信仰の歴史に理解を深めてほしい」と話した。問い合わせは柿森さん(電090.5481.7313)。


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