「ステルス2」は単なるマイナーチェンジか? それとも全く新たな進化モデルか?

後方の真っ赤な部分が特殊強化カーボンコンポジットリング(※提供:テーラーメイド)

革新的なカーボンフェースを打ち出したテーラーメイド「ステルス」の後継として、2023年モデルとなる「ステルス2」シリーズが発表された。『2』という名称から、安易に『1』のマイナーチェンジと想像する人は少なくないだろう。だが、「全く新しいモデルと言ってもいいほど、大きく進化しています」と語るのは、同社プロダクト担当の柴崎高賜(たかし)氏だ。

「エンジンもシャーシも最新型に変貌したモデル」

『FAR(遠くへ)』と『FORGIVENESS(やさしく)』を合わせた造語『FAR GIVENESS』を、新たなコンセプトに掲げた「ステルス2」――。

「どこまでも遠くへ どこまでもやさしく」を意図したスローガン

前作「ステルス」に対し、一部からは「球が上がらない」「アベレージゴルファーには難しい」というマイナス評価や口コミが流れたことも事実だ。そのような声を反映して“やさしさ”を大きく掲げたのか? と少し意地悪な質問を投げると、柴崎氏は「前作の評価を加味していたら、開発サイクルに間に合いませんよ」と、笑みを浮かべながらやんわりと否定した。

「『ステルス』→『ステルス2』の変化をひと言で説明するなら、車のボディが旧式から最新式に変わったほどの変化です。『ステルス』は、最新のエンジンを載せていましたが、シャーシが旧型でした。エンジンもシャーシもどちらも最新型に変えた『ステルス2』は、少なくとも2~3年程度の期間で開発することはできません」

「やさしさだけではなく打音も変えたカーボンリング」

ヘッド構造で象徴的な変化といえば、後方の赤いリングといえるだろう。「SIM2」で初採用した「フォージドアルミニウムリング」から、「カーボンコンポジットリング」に変化した。その真意は?

フェース、クラウン、ソール、後方部(リング) 全てがカーボン

「実は、比重的にはアルミのほうが、カーボンより軽いのですが、軽さ=弱さにつながり、『SIM2』のアルミニウムリングは、とても厚みを持っていました。インパクト時の衝撃を受け止め切れるように厚くしたアルミのリングは、カーボンリングと比較すると、結果的に5~7gほど重かったのです」

「カーボンリングに加え、ソール面のカーボンが占める割合が増え、余剰重量が増えたことでより後方のウエイトを重く設定できました。深低重心と高慣性モーメントを実現し、重心角も驚くほど大きくなったことで、ボールがつかまりやすく、ブレずに飛ばせるやさしい仕様に仕上がりました。また、カーボンリングによる強度化によって、打音にも良い影響を及ぼしています。サウンドリブと同じ効果を成し、音が高く長く響くようになっています」

「『プラス』→『プラス』の固定観念は捨ててほしい」

大きく変わったといえば、同シリーズ間での3機種の性能差が広がったことも挙げられる。前作のドライバー3機種に比べ、「ステルス2 ドライバー」「ステルス2 HD ドライバー」「ステルス プラス ドライバー」、それぞれの特性が明確となった。

それぞれスタンダード設定からライ角が異なっている(左から54、56、58度)

「今作は良い意味でも悪い意味でも、3機種を比べて打てば、当たるor当たらないがはっきり分かれ、選びやすくなりました。それだけ余剰重量が適材適所に配された結果だと思います。見た目は似た形状をしていますが、ここまで中身が違うのかと誰もが驚かれるでしょう」

「ただ注意が必要なのは、『ステルス プラス ドライバー』を使用していたタイガー・ウッズが、『ステルス2 プラス』より『ステルス2』の方を好む例もあります。今まで『プラス』を使っていたから『プラス』、『HD』だから『HD』といった固定観念は、今作では持ってほしくありません。特に『SIM2』以前のメタルウッドから乗りかえる人は慎重な選択が必要です。購入する前は、3機種全てを打って判断することをおすすめします」

ヘッド構造、打音、性能差――以上が開発陣の並べた大きな変化だが、その尺度を決めるのはプレーヤー次第。『FAR GIVENESS』のコンセプトのもと、長期間で考え尽くされたプロダクトは、ゴルファーの目にどう映るのか。まずは全3機種、固定観念を持たずに試打してみてはいかがだろう。

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