介護実習生受け入れで覚書 ベトナムと3例目 長崎県とダナンフォンドン短期大

覚書にサインをする寺原部長(右)とスン学長(画面)=県庁

 外国人介護人材を安定的に確保するため長崎県は12日、ベトナムのダナンフォンドン短期大と介護分野の技能実習生受け入れに関する覚書を結んだ。同国の大学との締結は3校目。9月ごろに同短大から6人程度の実習生が入国を予定している。
 同日、県と同短大をオンラインでつないで締結式を開き、寺原朋裕福祉保健部長とファン・クァン・スン学長が覚書にサインを交わした。寺原部長は「実習生が安心して働ける体制構築に務め、日本語や介護技術を学ぶための支援をしていく」とあいさつ。スン学長は「優秀な学生を推薦できるように取り組んでいく」と述べた。今後、3大学から年間計20人程度を見込む。
 覚書の内容は、大学側が本県で働く意欲のある学生を推薦し、県は県内の介護事業所に就労できるようサポートする。県はこれまでに同国のドンア大とクァンナム医療短大と同様の覚書を締結。昨年までにドンア大推薦の6人と事業所とのマッチングが成立した。1人は長崎市、3人は五島市で実習を始めており、残る2人は5月ごろから北松小値賀町で始める予定。
 県は2025年度に介護人材が約2100人不足すると推計しており、約600人を外国人材で補いたいとしている。

◎「外国人材 欠かせない存在」 “第1弾”現場へ 施設「大切に育成」

 県と覚書を結んでいるベトナムのドンア大から推薦され、“第1弾”として入国したホアン・ティ・タイン・ツックさん(23)は、昨年11月から長崎市の特別養護老人ホーム恵珠苑で実習を始めている。中島秀司施設長によると、同じ敷地内にある別の老人ホームと合わせ、2施設で10人程度の外国人が勤務(アルバイトを含む)。介護福祉士の資格を有する常勤職員もおり、夜勤を担うなど「(外国人材は)欠かせない存在になっている」という。

同僚職員に指導を受けながら介護技術を学ぶツックさん(左)=長崎市田上2丁目、特別養護老人ホーム恵珠苑(県提供)

 ツックさんは現在、同僚職員から指導を受けながら配膳や洗濯、移動補助などに従事。日本語の壁に苦戦しながらも「ちょっと疲れるけど楽しい」と独り立ちに向け、介護技術を覚えている。中島施設長は彼女の働きぶりを「真面目で熱心」と評価。「技術習得はこれからだが、笑顔や柔らかいスキンシップなど見習う部分は多い」と日本人職員に刺激を与える存在にもなっているようだ。
 県によると、県内の外国人介護人材は、在留資格の「介護」が67人(2021年12月末)、「技能実習生」が80人(21年10月末)、「特定技能」が34人(22年6月末)。新型コロナウイルスの水際対策が緩和された22年3月以降、技能実習生などの受け入れが再開されており、現在はさらに増えているとみられる。
 本県でも増加傾向にある外国人介護人材について、中島施設長は「国内だけでなく、欧州など世界中で取り合っている。自分たちの事業所に来てもらうのは大変なこと」と強調する。
 ベトナムの大学から優秀な人材を送り込んでもらう県の事業に期待する一方、実習先として選ばれるためにはツックさんのような“先輩”から現地に伝わる情報も重要視。そのため、仕事だけでなく、プライベートでも職員がドライブや買い物に誘うなど積極的にコミュニケーションを取り、大切に育てているという。今後、安定的に本県に来てもらうためには「(現地で売り込む)県だけでなく、受け入れる施設の役割も大きい」と話す。

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