鳥インフル「明日はわが身」... 養鶏場、消毒徹底 動物園、エサやり体験中止

養鶏場内にトラックでまかれる石灰。養鶏農家は警戒を強め、鳥インフルエンザの発生防止を図っている=12日午前、県内(県提供)

 全国で相次ぐ高病原性鳥インフルエンザの発生を受け、栃木県内の養鶏場や動物園が警戒を強めている。ウイルスの侵入防止のため、農家は鶏舎や長靴の靴底の消毒などを徹底し、動物園は来園客のエサやり体験を中止した。群馬県や茨城県など隣県を含め、23道県の養鶏場などで感染が拡大しており、関係者は「明日はわが身」と戦々恐々としている。渡良瀬遊水地に定着している国の特別天然記念物コウノトリの見守り団体も不安を募らせている。

 「毎朝、鶏舎に行くたびに鶏が死んでいないかとびくびくしている」。約1万1千羽を飼養する益子町塙、薄羽哲哉(うすばてつや)さん(44)は不安な日々を過ごす。

 昨年12月下旬に茨城県笠間市で発生した農場とは数十キロの距離。鶏舎にまく消毒用の石灰は殺菌力の高いものに変え、長靴の消毒頻度も増やすなど対策を強化した。「できることをやっていくしかない」

 県養鶏協会によると、関東は例年2月後半~3月が流行しやすい時期という。大室憲一(おおむろけんいち)会長(48)は「今回は非常に早く、感染拡大が心配だ」と懸念する。今月中に会員農家へ消毒剤などの配布を予定している。

 県は養鶏場など県内全311農場に対し、昨年10月から消毒状況などの報告を毎月求めている。県畜産振興課は「県内でも野鳥の感染が確認されており、警戒が必要」とし、消毒費用の補助など農家の支援策も検討している。

 那須町大島の「那須どうぶつ王国」は同年11月以降、ペンギンやカモなどへのエサやり体験を中止した。再開は見通せないという。

 感染した野鳥の侵入を防ぐため飼育スペースに防鳥ネットを張り、来園者には靴底や手指の消毒を求めている。獣医師の原藤芽衣(はらふじめい)さん(32)は「対策を徹底しても完全に防ぐことは難しい。運次第ともいえる」と苦しい胸の内を語った。

 香川県では同月、コウノトリ1羽がため池で死んでいるのが見つかり、感染が確認された。渡良瀬遊水地にも飛来するが、野生のため対策が難しいという。見守りボランティアの平田政吉(ひらたまさきち)さん(74)は「今1番の心配事が鳥インフル」と気をもむ。

 雄のひかると雌のれいが巣塔にいる様子が見られ、4年連続の繁殖へ期待がかかる。「何とかしてあげたい気持ちが募るばかり」とため息交じりに話した。

隣県の鳥インフルエンザ発生農場の飼養羽数

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