横浜・山王台小アスベスト飛散で市の計画確認や届け出受理の不備続々

横浜市の山王台小学校(磯子区)で9月5日、強力な発がん性を持つアスベスト(石綿)が市の基準を25倍超えて漏えいする不適正工事が起きた問題をめぐり、市の行政対応の不備が次々明らかになっている。(井部正之)

横浜市・山王台小学校の体育館改修で屋根の上に放置された石綿含有スレート(横浜市提供)

◆市の確認不足が露呈

石綿漏えいが起きたのは同小学校・体育館の骨組みだけ残してリニューアルする大規模改修工事。市によれば、体育館の屋根、外壁、内壁、軒天、天井(一部)の成形板に石綿を含有していた(計1573平方メートル)。

市の発注仕様書では石綿含有成形板の作業では電動工具を使わず、原形のまま撤去するよう求めていた。

元請け・岡山建設(同市西区)が市に提出した作業計画には電動工具の使用について記載はなかったことから、事業者が勝手に契約違反の危険な施工をしたことは間違いない。

ただし、成形板を固定するボルトやナットがさびているなど手作業で外すことが困難な場合の対応について計画に位置づけがなかった。

石綿含有の成形板などの撤去で、そうした場合の対応をあらかじめ考えておくのは常識だ。ところが市学校整備課は不備に気づかないまま計画を受理していた。

「そこまで配慮が至らず確認できませんでした」と寺口課長は認める。発注者である市のチェック不足が露呈したといえよう。

さらに撤去した石綿含有波形スレートの屋根材や壁材の扱いについても同様の問題が生じていた。

撤去した石綿を含む屋根材や壁材をそのつど廃棄物の保管場所に持って行くのか、午前と午後にそれぞれ移動するのかといった頻度や、どのように降ろすのかについて計画に記載はなかったと監督・指導を担う市大気・音環境課は明かす。それどころか廃棄物の保管場所がどこかすら作業計画ではわからなかったという。

これも発注元の市学校整備課が基礎的な確認もしないまま計画を受理していたことを示す証拠だろう。

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問題はまだある。

横浜市では、条例で石綿を含む成形板などの除去においても、施工面積が1000平方メートルを超える場合、作業計画の届け出などを求めている。

届け出を受けた市大気・音環境課もまたこれらの計画上の不備に気づかないまま作業計画を受理していたことになる。

ボルトやナットがさびている場合の対応について記載がないのに改善もさせずに受理していたことに弁解の余地はないが、同課は大気環境規制などを所管しており廃棄物規制は担当外だ。そのため廃棄物の取り扱いについて見過ごしたことは仕方がない側面もある。

それでも市には条例や市独自の指導基準に適合していたかを確認する義務がある。大気部局は当然ながら廃棄物の保管など所管外の計画が適正かどうか判断できない。であれば、所管課に照会するなどして確認する必要があったのではないか。

しかし市産業廃棄物対策課によれば、もともと大気部局に提出された届け出や作業計画を確認する仕組みもなく、今回の件でも照会されていなかった。明らかに市における体制整備や制度運用に不備があるといわざるを得ない。せっかく条例を作っても十分機能させる仕組みや対応がなかったことになる。

市は発注元における計画のチェック機能や現場確認、監督・指導を担う環境・廃棄物部局における条例上の届け出受理における対応や運用について見直す必要があろう。

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