「ウチはコレを推す」VS「持続可能でやさしい」熾烈を極める家電の日韓戦!“電気店の息子アナ”が見た「CES」②

PR上手な韓国勢、未来見据える日本勢

米・ラスベガスで開かれた世界最大のテクノロジー展「CES」(シー・イー・エス)は、世界的な家電見本市として、1967年にスタート。電気店の息子として育ってきた私としては、各国の電気メーカーに特に注目しました。

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まず、今年は韓国勢の勢いがすごい。メイン会場エントランス入ってすぐの超一等地、ベストポジションには「LG」が君臨。「OLED」の超大型画面で来場客を圧倒しました。Oはオーガニックの略で、発光材料に有機物質を使ったLED(発光ダイオード)「OLED TV」の美しさを積極的にアピール。「ウチの会社はコレを推す!」というコンセプトの打ち出し方が優れていました。

大迫力の「OLED TV」

化学応用して環境保全に注力

一方、日本勢、パナソニックも負けていません。体育館3つ分ぐらいはありそうな広大なブースを確保。「サステナビリティ」(持続可能性)を感じさせるやさしいイメージで勝負です。

入り口には、存在感抜群の木が一本直立していました。これは、太陽電池の次世代型と言われる「ペロブスカイト太陽電池」のイメージ展示です。太陽光を受けた葉が発電し、作られた電気を使って、人々がスマホの充電をしたり電動自転車の充電をしたりと。まさにグリーンでエコな夢の世界ではないですか!

同社によると、今回はあくまで象徴的な展示との事ですが、開発を担当した金子幸広さんによると、塗布が可能な「ペロブスカイト」なる結晶構造を持つ物質を葉っぱに塗れば、理屈的には発電ができるということで、5年以内にペロブスカイトを塗った窓や建物の壁でエネルギーを作れるようになることを実現したいといいます。

このペロブスカイトの実用サイズ(800平方センチメートル以上のカテゴリー)では、世界最高の発電効率17.9%を実現し、これは、現在多くの屋根に乗っているシリコン系太陽電池に匹敵する出力となりました。

クリーンなエネルギーが大好きな私は、現在マンション暮らしで太陽光パネルを設置できず、悔しい思いをしていたのですが、ペロブスカイト太陽電池なら窓を使える!いや、塗布できるわけだからブラインドでも!いずれはプランターの木も発電所になるのでは、と期待が高まります。すべての家で発電するようになれば、エネルギー不足問題も解決に近づきますね。

伝えたくない音、選んで消音

また、パナソニックホールディングスの子会社「Shiftall」(シフトール)のコーナーには、防毒マスクか、アヒルのくちばしか、とツッコミを入れたくなるひときわ奇妙なアイテムが…。

正体は「mutalk」(ミュートーク)。開発者の大嶋佑典さんいわく、「ウェブ会議中に叫んでも、自分の周辺には音を漏らさず、でもオンライン参加者にはしっかり伝えられるというマイク」とのこと。さらに周りの音もシャットアウト。

サーファーでもある大嶋さんは、「海の目の前でオンライン会議に参加したいけど、波の音からオフィスにいないことが相手にバレてしまう。波の音をオンライン先の相手には聞こえないようにして仕事できたらな」という発想から開発を始めたそう。

シェアオフィス利用者が増えたり、オフィスで働く人とリモートで働く人が混在しているいまの状況で、不用意に伝わってしまう音をコントロールしたいというニーズはあるはずと踏んでいる大嶋さん。見た目のおもしろさと実用性の高さから多くの海外のメディアからも注目されていました。

生活に寄り添う姿勢に好感

ソニーは今回、ホンダと提携して車を発表、手がける製品の幅をさらに広げていますし、今回参加企業中、最大の面積を使用した「サムスン電子」は、メーカーが違う冷蔵庫や洗濯機、テレビ、空調機器などの操作をクラウドを介し、同一のアプリで行うことを目指した家電メーカのアライアンス「Home Connectivity Alliance(HCA)」のデモを行い、なんと、ライバル会社LGの家電をアプリで動かしていました。家電業界の日韓戦は、それぞれのカラーを出しながら、し烈を極めています。

毎度のことですが、CESには、投資家を狙って「テクノロジーで一発当ててやろう」という下心を隠しきれない“ギラギラ企業”が数多く出展しましたが、そんな中で、地球に寄り添うやさしい雰囲気を出している日本企業。「やはり、あなた方は日本の誇りだっ!」と電気店の息子として(ひいき目かもしれないですが)確信したのでありました。(SBSアナウンサー 牧野克彦)

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