【新型コロナ】膨れ上がる死者、致死率から推計する『真の』感染者数は?

 新型コロナウイルスの「第8波」は引き続き収まる気配を見せていないが、懸念されているのが年末から膨れ上がり続ける死者数。以前の感染拡大と単純に比較することは問題があるが、政府で自治体と協力して調べたオミクロン株での致死率から考えると、発表される感染者数は明らかに少ない。見た目の新規感染者数がこれまでの波と比べて爆発的な増え方でないだけに、これまでで最大級のひっ迫だと複数の医療従事者が訴えているにもかかわらず、マスコミも含めて危機感が共有されていないように見える。そこで、致死率を元に簡単ではあるが、実際の新規感染者数を推計してみた。

死者「503人」と致死率を使って計算してみると‥

 すでに東京都医師会の尾崎会長が定例会見で話しているのをはじめ、複数の医療関係者から、発表される1日の新規感染者数が実際と乖離している可能性が指摘されているが、その根拠は致死率だ。政府が複数の自治体の協力を得て調査した、オミクロン株が主流となった近々の年代別の致死率の推計が公表されている。政府が調査したものであるから今回はこれが正しいと仮定して、最新の人口統計も活用して試算してみたい。

2022年12月21日のアドバイザリーボードに提出された厚生労働省の資料より

 まずこの資料で公表された各年代別の致死率は、60歳未満は0.00%、60-70歳代は0.18%、80歳以上は1.69%となっている(2022年7月-8月)。これをベースに、死者の年代別数を推計する。

 総務省が毎月出している人口動態の最新の推計によれば(2022年12月)、全人口(1億2484万人)における60歳未満の割合は約60%、それ以上の年代は40%となる。60歳以下では死者が出ない計算となるのでいったん除外し、人口統計から60歳以上における60-70歳代と80歳以上の割合を計算すると、前者は71.6%、後者は28.4%となる。今回の試算は新規感染者数を割り出すためなので、この割合は丸めて「60-70歳代は70%」「80歳以上は30%」とする。この前提で14日に発表された死者数503人を按分すると、60-70歳代の死者は352.1人、80歳以上は150.9人となる。四捨五入してそれぞれ352人、151人とする。

 この年代別死者を致死率で割ると、致死率からみた年代別の新規感染者はそれぞれ60-70歳代が19万5556人、80歳以上は8935人となる(それぞれ四捨五入した)。この値は、さきほど求めた人口比率では全人口の4割にあたるから、この数を足した値をさらに0.4で割れば、致死率からみた新規感染者数の全体が計算できる。つまり204491/0.4である。計算してみると51万1227.5人となる。なお、14日に厚生労働省が発表した1日の新規感染者数は13万2071人、7日間移動平均は14万6003人であるから、誤差も相当あると思われるが、少なくとも同省が把握できる数よりも倍以上は実際の感染者が出ているものと推計できる。毎日発表されるこの数値は明らかに実態を反映しておらず、第7波よりも感染は広がっていない、という認識は明らかに危険だ。

 また、年が変わってからは3年ぶりに季節性インフルエンザの流行が始まっている。こちらも毎週厚生労働省が定点あたりの症例数を都道府県ごとに公表しているが、最新の13日付の発表では、山形県以外すべての都道府県が流行に入った。しかも感染が広がり、指数関数的に患者が増えるのはこれからだ。ピークになると13日付の数値からさらに数十倍になることも現実的に考えられる。新型コロナと合わせれば、1月下旬から2月中旬にかけ、1日100万人以上の感染者で日本中が溢れかえることも十分に考えられる情勢だ。

 以上を考え合わせれば、これから日本の医療提供体制が未曾有の危機に陥るという想定は、まったく荒唐無稽ではない状況にある。多くの年代にとっては新型コロナは死なない病気になっているが、死なないからといって感染対策を疎かにし広まるままにしていると、それ以外の病気や怪我の治療を満足に受けられず死地を彷徨いかねない可能性を自ら引き上げてしまうだろう。

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