東京農工大学など、野生クマの食生活をクマ目線で撮影することに成功

東京農工大学、アメリカ・イリノイ大学、東京農業大学などの研究者からなる国際共同研究チームが、ビデオカメラを搭載した首輪(以下、カメラ首輪)を野生のツキノワグマ(以下、クマ)に装着することで、クマ目線での採食行動を記録することに世界で初めて成功した。

従来、動物の食生活を探る手法としては糞の内容物を分析する糞分析法が一般的とされているが、糞の中では咀嚼や消化の影響で食べ物が原形をとどめていないことも多く、種類を特定しづらいという欠点がある。

野生のクマの食生活も、詳細には明らかとされていなかったことから、今回、研究チームはカメラ首輪を用いることで、クマの未知の採食行動を明らかにすることを目指した。対象は2018年5~6月に捕獲された4頭の成獣クマで、日中に15分間隔で10秒間の映像を撮影するカメラ首輪を装着した。カメラ首輪は一定期間後にクマの首から脱落するように設計し、回収したカメラ首輪の映像からクマの食べ物を確認した。

結果として、4頭分の映像から30種類以上の食べ物を特定することができた。植物の葉や花、果実の多くは種類や属まで特定することができたほか、ニホンジカの子どもやニホンカモシカの成獣などの哺乳類の採食も確認された。

一方、同時に実施した糞分析法では、102個の糞から15種類前後の食べ物を特定できたものの、物理的に破壊されやすい植物の葉や花は種類までは特定できず、哺乳類も体毛しか確認できなかったことから種類の特定には至らなかった。

以上から、糞分析法では種類の特定が難しい食べ物の種類も、カメラ首輪の映像から明らかにできることが示された。また、映像の解析により、クマの食生活には個体差が存在することも明らかにされたという。こうした技術を様々な野生動物に用いることで、未知な生態が解き明かされることも期待されるとしている。

論文情報:

【Journal of Mammalogy】Comparing information derived on food habits of a terrestrial carnivore between animalborne video systems and fecal analyses methods

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