妻に先立たれ…失意の底からラーメン店再開 81歳、小山の石井さん

新調した看板の前で自信作の麻婆麺を持つ店主の石井さん

 【小山】城北6丁目の「らーめん大鵬」店主石井芳次郎(いしいよしじろう)さん(81)はこのほど、半年の休業を経て、30年来続けてきた店を再開した。二人三脚で切り盛りしてきた妻に先立たれ、失意の底に沈んでいたが、「自分には店しかない」と奮起。看板も新調して再び腕を振るっている。

 JR小山駅前で居酒屋を営んでいた石井さんは駅前再開発に伴い1991年、現在地に引っ越し、ラーメン店を開店。近くの工業団地の従業員らで繁盛し、休む暇なく妻マサイさん(享年78歳)と店に立った。

 看板メニューは、マーボー豆腐を汁なし麺にのせた「麻婆(まーぼー)麺」。さんしょうを利かせた甘めのマーボー豆腐は、居酒屋当時から出してきた自信作だ。近年は競合店の出店が相次ぎ、かつてほど多忙を極めなくなったが、常連客に支えられ、店を続けてきた。

 そんな中、マサイさんが転んで頭を打ち、入院。昨夏、帰らぬ人となった。「365日いつも一緒が当たり前で、優しい言葉もかけなかった。亡くなって初めて存在の大きさに気付いた」と石井さん。「男ってばかだね」。気落ちして、店を閉めたままにしていた。

 それでも「このまま店を閉めたら自分も死んじゃう。閉めるのは死ぬ時」と立ち上がり、店の中を片付け、照明も取り換えて昨年末、再開した。

 営業は昼だけ、メニューは麻婆麺や麻婆定食などマーボー豆腐関連だけで始め、最近、ラーメンやチャーハンも追加した。安くて量が多いのは昔と変わらないが、品数を絞り丁寧に作れるようになったのが奏功してか、皆残さず食べてくれるという。「ありがたいし励みになる。年を取って体はつらいが、気持ちがあれば続けられる」と、生涯現役を通すつもりだ。水曜定休。

© 株式会社下野新聞社