ステラ マッカートニー、自社で残った混紡生地をリサイクルし新製品をつくる事業に着手

ステラ マッカートニーの2022年ウィンター コレクション

ステラ マッカートニーは2023年から、繊維リサイクルの米スタートアップ「プロテイン・エボリューション」と連携し、コレクションで残ったポリエステルやナイロンなどの混紡生地をリサイクルし、新品と遜色がなく無限にリサイクルできる繊維へと生まれ変わらせ、新たな服や靴などをつくるパイロット事業に着手する。

2021年に創業し、コネチカット州ニューヘイブンに本拠を置くバイオテクノロジー企業「プロテイン・エボリューション」は、廃棄された繊維やプラスチックを新しい繊維・プラスチックを製造するための化学成分に転換する事業を手掛けている。同社独自のこの技術は、ポリエステルやナイロンなどの混紡生地の廃棄物という世界の繊維産業が抱える課題の一つに取り組むものだ。

プロテイン・エボリューションの共同創業者兼CTO(最高技術責任者)のスコット・スタンキー氏は「当社の生物学的リサイクル技術は、繊維産業全体の資源循環を可能にするものです。ステラ マッカートニーと協業することで、当社のプラットフォームが実際にどう機能するかを実証実験し、当社の技術を既存の製造工程にシームレスに連結する方法を共に学べます」と語る。

同社が目指すのは、化学業界の低炭素・循環型経済への移行を後押しすることだ。同社は、共にイェール大学を卒業したスタンキー氏とコナー・リン氏が設立した企業。米国家技術賞を受賞した科学者であり起業家のジョナサン・ロスバーグ氏ともパートナーシップを結んでいる。同社が最初に開発したのは酵素を使った技術で、繊維やプラスチック廃棄物を無限に再利用可能な資源にできるものだ。

CBO(最高業務責任者)を務めるリン氏は「ステラ マッカートニーというブランドはサステナビリティ・循環・イノベーションの代名詞。私たちはこれまで産業規模では行われてこなかったことを成し遂げようとしています。まだ始まったばかりです」と話している。

サステナブル素材のパイオニアとして知られるデザイナーのステラ・マッカートニー氏は同社の初期投資家の一人だ。ステラ マッカートニーでは最先端のサステナブル素材をいち早く取り入れ、菌糸体からできたマッシュルームレザー、バイオ素材のフェイクファー、発酵を用いて製造したマイクロシルク、持続可能な管理が行われている森林の木から作られたビスコースを使った衣服などを発売してきた。

マッカートニー氏は「大量のファストファッションが生まれ廃棄されているのは、自然資源の利用や膨大な廃棄物という問題点から考えても非常に衝撃的なことです。地球の未来を守るには今日から動きはじめることが必要です。循環型で再生型のソリューションはファッションの未来に楽観的な見通しをもたらします。プロテイン・エボリューションとのパートナーシップを通じて、古い素材から新たなポリエステルを開発したいと考えています。気候変動目標を達成するというのはすべきことの一つですが、より持続可能な未来に向けて意義のある一歩を踏み出すことこそが真に重要なことなのです」と語る。

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