東京が近くなる、まちが変わる…北陸新幹線が福井県にもたらすものは 2024年春開業、期待と課題

まっすぐ延びる北陸新幹線の線路。福井にとって明るい未来へのレールとなるか=福井県あわら市伊井
整備が進む福井県内の北陸新幹線4駅。(左上から左回りに)福井駅、芦原温泉駅、敦賀駅、越前たけふ駅

 北陸新幹線金沢―敦賀間が2024年春、開業する。福井県にとって「100年に一度」と言われる転換期を迎え、交流人口の増加や観光地の活性化、福井の知名度アップに期待が高まる。

 福井―東京間は乗り換えなしで結ばれ、乗車時間は3時間を切る。福井県内に整備される4駅周辺では再開発が進み、まちを活性化させる大きなチャンスを迎えている。北陸3県は1時間圏内でつながり、長野、高崎、大宮といった信州、北関東地域も近くなる。

 その半面、ストロー現象で首都圏への人材流出に拍車がかかる恐れがある。北陸と大阪、名古屋を結ぶ特急は敦賀止まりとなり、福井と結び付きが強い関西・中京圏との行き来が不便になる。北陸線は第三セクター化され、他県の状況をみると厳しい運営も予想される。

 北陸新幹線がさらに小浜、京都を経て大阪までつながれば、日本海側に新たな国土軸が生まれる。しかし、敦賀以西の23年度当初の着工は22年末に先送りが決まり、全線開業に向けた道筋は不透明なままだ。

 金沢―敦賀間が着工したのは12年8月。23年春の開業を予定していたが、福井、石川両県境にある加賀トンネル内のひび割れや敦賀駅の施工遅れで24年春に延期された。敦賀駅までのレール敷設は既に終わり、敦賀車両基地までを残すのみ。福井、芦原温泉、越前たけふの3駅は建築工事が完了した。整備新幹線の駅舎として最大規模を誇る敦賀駅は今秋完成だ。

 敦賀延伸によって福井県内と首都圏の移動がスムーズになる一方で、特急サンダーバード、しらさぎは敦賀駅止まりとなる。関西や中京への移動は新幹線や並行在来線への乗り換えが必要で、人的、経済的交流にマイナスにならないような工夫が求められる。

 北陸新幹線の県内開業による福井県への経済波及効果について、日本政策投資銀行は20年2月、年間約309億円に上るとのリポートを発表した。観光とビジネスによる入り込み客数は首都圏から年間約71万3千人、関西圏からは年間約7万2千人の計約78万5千人増えると試算する。県内の自治体や観光業者などの期待は大きい。

 4駅の周辺では、各地の特色を生かしたまちづくりが進行している。最北の“玄関口”となる芦原温泉駅では、物販店舗や観光案内所が入る施設「アフレア」が23年3月開業を目指している。

 福井駅西口の通称「三角地帯」の駅前電車通り北地区A街区では、県都の新たなシンボルとなる県内最高層約120メートルの再開発ビルの工事が進んでいる。一方、同地区B街区とハピリン南側の駅前南通り地区は22年11月に事業の遅れが表面化。まちづくり指針「県都グランドデザイン」の目玉事業、アリーナ構想とともに実現までの道筋が注目される。

 JR駅に併設しない県内唯一の新設駅となる越前たけふ駅の隣接地では、23年3月に道の駅「越前たけふ」が開業する。周辺には広大な農地が広がり、越前市は新幹線開業後を見据えた研究開発施設や商業施設などの誘致を進めている。

 敦賀駅の西地区では、敦賀市が官民連携で整備した新拠点「TSURUGA POLT SQUARE『otta』」が22年9月にいち早くオープン。核となる公設書店「ちえなみき」の来店者は3カ月で10万人を超え、鉄道と港のまちの新しい顔となっている。

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 福井新聞は、長期連載「シン・フクイケン」を始めます。新幹線によって福井県がどう変わるのか、課題を含めて展望します。福井の「新」時代を見据え、「真」の姿を見つめ直し、県民が次の100年も幸せに暮らせる地方のあり方を「深」く考えていきます。第1章では、県外出身者らの目を通して「福井の立ち位置」を考察し、強みと弱みを明らかにします。

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