「絶対に感染させない」 長崎県内動物園 警戒続く 江迎の鳥インフル防疫措置完了

鳥インフルエンザ感染拡大を受け、屋内の隔離獣舎に収容しているコブハクチョウ。井上さん(右)は感染防止のため「できる限りのことを続けたい」と話す=佐世保市、森きらら

 長崎県佐世保市江迎町の養鶏場で昨年12月に発生した高病原性鳥インフルエンザは15日に防疫措置が完了し、感染は拡大しなかった。しかし、全国的には過去最悪のペースで感染が広がっており、県内で鳥類を飼育する動物園などは危機感を募らせている。中には絶滅危惧種に指定された鳥類もおり、獣医師らは「絶対に感染させない」と警戒を続けている。
 「ついに来たか」。昨年12月、江迎町の養鶏場から約20キロの場所に位置する佐世保市船越町の九十九島動植物園(森きらら)では緊張が高まった。毎年秋頃から感染対策を続けているが、獣医師の井上渚さん(43)は昨年からの発生数は「異常」と話す。
 福岡県のエミューを飼育する農場では1月に感染が確認され、約430羽が殺処分されている。
 同園では絶滅危惧種のフンボルトペンギンとナベヅルなどを飼育している。同園に飛来してくるカモが鳥インフルを保有している可能性があるが、これを完全に阻止することはできない。カモが残したフンにウイルスが含まれていた場合、野外を散歩したペンギンが踏んだり、飼育員がフンが付着した長靴で他の獣舎に入ったりして、感染を広げてしまう可能性もあるという。
 同園は諫早市で野鳥の感染が確認された昨年11月以降、一部の鳥類の展示やペンギンの野外散歩イベント、野鳥の手当てなどを中止。園外との接触を極力減らす工夫を続ける。
 ペンギンは、家畜伝染病予防法で指定する「家畜」には当たらないため、感染してもすぐに殺処分されるわけではない。日本動物園水族館協会と協議し、感染した動物の個体数などの貴重さや、他の個体に感染させるリスクなどを含めて判断するという。
 絶滅危惧種など数が少ない動物は「世界的な財産」(井上さん)。動物園は飼育展示だけでなく、繁殖など「種の保存」をする重要な役割がある。殺処分となった場合は「園だけの問題に限らず、大きな損失になる」と危機感を募らせる。「動物園には命を預かる責任がある。できる限りのことを毎日続けたい」と力を込める。
◆   ◆
 西海市の長崎バイオパークでは、フラミンゴやダチョウ、エミューを飼育。餌やり体験を中止したり、一部展示を取りやめたりしている。伊藤雅男園長(61)は「鳥インフルだけでなく新型コロナウイルスも含め、目に見えない敵と戦い続けなければいけない」と気を引き締める。同園は来園者と動物の距離が近く、餌やりなどふれあいを通して命の大切さを学べるのが特徴。ただ、多様なウイルスがまん延する中で「園の売りも『今後続けていけるのか』と不安もある」と複雑な心境を語った。


© 株式会社長崎新聞社