緊急要請も搬送3時間待ち…コロナ第8波で訪問看護、緊迫の現場

新型コロナウイルス感染症で続く医療逼迫(ひっぱく)が、訪問看護サービスの現場にも押し寄せています。患者の容体が悪化しても救急車や緊急搬送先が見つからないという緊迫の事態が起きています。

12月29日、訪問看護師が話しかけていたのは、新型コロナに感染した東京都内に住む90代女性です。この日、酸素投入を行うために看護師が女性の自宅を訪れると、女性の病状が急変していたといいます。ゼーゼーと息苦しそうな女性の体温や血中の酸素濃度を測ろうとしても、容体が悪化していて数値が出ず、外にいるスタッフに状況を伝えました。

この時、家の前まで同行していた訪問看護事業所「訪問看護ステーションブロッサム」の代表・西村直之さんは「血中酸素濃度が測れる状態ではなく、すぐ酸素を入れた。ただ、入れても全く酸素の数値が上がらず、再度主治医に連絡して、救急要請をした」と、当時の状況を振り返ります。しかし、救急要請の電話口から返ってきたのは「司令室から『今、救急車が近くにいないので(救急車が到着するのは)何時になるか分かりません。それでもよろしいですか』という言葉で、西村さんは衝撃を受けたといいます。西村さんは当時を振り返り「一瞬、頭が真っ白になった」と話しました。

結局、30分後に救急隊は到着しましたが、今度は搬送先の病院が見つからず、女性はおよそ3時間にわたって待機を強いられました。

西村さんによりますと、訪問看護を行っている都内27の高齢者施設のうち第8波でコロナの陽性者が出たのは半数以上の16施設で、第7波の6施設から2倍以上に増加しているということです。西村さんは"救える命を救うため”にも医療サービス全体で連携を強化し対応することが必要だと指摘し「やはり地域・訪問診療・訪問看護・病院・他の関係者による強固な体制強化や連携が必要だと思う」と話しています。

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