同時流行、深刻化の恐れ...インフルが県内で拡大 医療機関「コロナ単独より負担」

発熱などがある患者専用の入口前で、診察の準備をする寺田院長=16日午後、宇都宮市雀の宮5丁目

 インフルエンザが栃木県内で3年ぶりの流行期に入り、医療機関から外来の負担の増加を懸念する声が上がっている。冬休み明け以降、新型コロナウイルスと肩を並べるほどの患者の急拡大を実感している診療所もある。コロナ禍以前に猛威を振るっていた状況と比べると、流行の度合いはまだ低いものの、識者は今後、コロナとの同時流行が深刻化する恐れにも言及する。

 小山市のおおきこどもクリニックでは、13日ごろからインフルエンザ患者が急増した。1月第2週まではコロナ患者の方が2~3倍多かったが、16日午前はコロナ10人に対して8人と、匹敵しつつある。

 インフルエンザは発症直後だと検査で陽性と判定されず、再検査が必要な場合もある。大木丈弘(おおきたけひろ)院長(51)は「コロナ単独より負担が増している」と話す。

 宇都宮市のてらだファミリークリニックでも、インフルエンザ患者を少しずつ確認するようになった。患者の増加で待ち時間も増え、心ない言葉を浴びせられるスタッフも。寺田寛(てらだひろし)院長(56)は「職員の疲労は大きい」と吐露する。

 県内では1月2~8日の週に、定点医療機関からの患者報告数が、流行の目安となる1定点当たり「1人」を超える2.36人となった。ただ、コロナ禍前には毎年出されていた注意報(10人)や警報(30人)レベルとは開きがある。

 同市のさくらがおかクリニックの依田祐輔(よだゆうすけ)院長(56)は「発熱などの患者は、依然としてコロナが中心」とし、オミクロン株の派生型が拡大する恐れをより警戒する。

 自治医大の中村好一(なかむらよしかず)教授(公衆衛生学)は「コロナとの同時流行の入り口に立っている状況」と指摘する。

 インフルエンザが3年ぶりに流行した明確な理由は分かっていない。感染対策の緩みではなく、ウイルス同士の干渉による変異の可能性を挙げ、今後さらに変異が進む恐れも警戒する。

 検査しなければどちらの感染症かは分からず「発熱外来はさらなる逼迫(ひっぱく)が予想される」とみる。コロナとインフルエンザの対策は共通だとして、手指消毒やマスク着用の徹底に加え、ワクチン接種も「強く推奨したい」とした。

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