【Catch the Moment ⑦】意外と難しいお約束シーン

大きなフィールドで、一球一球何が起こるか分からないのが野球。試合中の最高の瞬間を捉えるのは困難である。その中20年以上MLBカメラマンとして活躍する田口有史がこれまで捉えた「最高の一瞬(Moment)」を一話一枚ずつ紹介する。

「Walk off Win」ー 日本でいうサヨナラ勝ちをした際、そのヒーローインビュー中にウォーターサーバーを後ろからぶちまけるのがお約束のMLB。上手く撮れたら水しぶきが飛び交う様子は喜びの表情と共に迫力満点だが意外と難しい。

テレビカメラに向かって話しているため、その横で正面から撮っていれば撮れるようにも思うけれど、1枚でのその瞬間を見せる写真の場合、必ずしも王ではない。思いがけず水を掛けられた瞬間、人間というのは俯いたり、顔を覆ったり、または掛けられる直前に逃げだしたり、かけられる選手がどうリアクションするかわからないので、意外と正面が良いとは限らない。

How to “Catch the Moment”

この時はテレビカメラから90度近く。インタビューを受けている選手の横からその瞬間を狙った。その位置の方がスタンドの切れ目から背景が黒くなる部分が多いので、水しぶきが映える。というのと、水をかける選手がグランドの方に走り抜けていくだろうという予想から、その位置取りをした。

水を掛けられたボビー・ウィットJr.、掛けられた瞬間に顔を両手で覆ったため、この位置だったからこそ表情を捉えることができた。その表情の周りには予想通りゲータレードの水しぶきが写り込んで、狙いに近い迫力ある歓喜の写真になった。

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