「商売せずに堆肥つくれ」命令に抵抗する北朝鮮の商人たち

北朝鮮で公式に商売をするには、市場を利用する。市場の開場時間は地域ごとに異なるものの、最も長いときで午前9時から午後9時まで認められていた。しかし、農村動員に支障をきたすなど、様々な理由で短縮されることも頻繁にあった。開場時間の短縮は売り上げの減少に直結し、商人の不興を買うため、短縮と再延長が繰り返されてきた。

中国との国境に接する両江道では2020年5月、それまで午後3時から6時までの営業が認められていたが、新型コロナウイルスの感染防止を理由に営業が全面禁止された。ところが、商人の猛反発をくらい、1週間で撤回に追い込まれた。

全国有数の規模の市場がある咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)では、午後2時から5時までだった市場の開場時間が、午後3時から5時の2時間に減らされたと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

清津ではコロナ前、午後1時から9時までの営業が認められていたが、2020年以降、夏は5時間、冬は3時間に短縮された。それがさらに短縮されたわけだが、理由は「堆肥戦闘」だ。

不足する化学肥料を補うために、何百キロもの人糞を集めて堆肥を作って農場に納めるという、北朝鮮で毎年1月に行われているものだが、それに支障をきたすからと、市場の開場時間が短縮されてしまったのだ。

だが、商人も負けてはいない。日々の収入が生活に直結するだけあって、少しでも稼ごうと、堆肥戦闘そっちのけで市場前の路上で商売に勤しんでいる。

「市場での営業時間が3時間だったころも、どうにか生き延びて状況だったのに、堆肥生産を理由に営業時間を短縮したらどうやって生きていけばいいのか」
「カネを稼いで生きて行けてこそ、動員に応じることができるのではないのか。こちらも生き延びるのが先決なので、動員があっても仕方なく路上で商売している」(情報筋)

当局は、路上での商売を様々な理由をつけて取り締まりの対象としている。安全員(警察官)が大挙動員され、取り締まりに当たっているが、商人たちはその目を逃れて、物の売り買いをしている。

そもそも北朝鮮国民は、ありえないほど大量の人糞ノルマを無理やり達成するために、市場で購入したりしていたのだが、市場の開場時間が短くなればそれとて難しくなるだろう。

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