副業で初めての確定申告、どうすべき? 事業所得と雑所得の違いや、注意すべきポイントを税理士が解説

コロナ禍となりはや3年、生活のスタイルが変化して副業を始めたという方も多いようです。なのに「副業で稼ぐと何かしないといけないの?」ですって? なんて……嘆かわしい!

日本では、稼ぎがある人は申告して納税するのがルールです。そこで、副業などで給与以外に収入を得始めたが、どうしたらいいかわからない……という方に、お笑い芸人で本物の税理士である税理士りーなが、申告の仕方について解説します。


確定申告のイロハ

まず「申告なんてしたことがない」という方は、なぜ今まで申告しなくてよかったのでしょうか? それは、会社から受け取る「給与」しか収入がなかったので、会社がその給与の金額をもとに年収を集計して、年末調整の時に税金を計算して、本人の代わりに税務署に年収や税額が書かれた「源泉徴収票」を提出してくれていたからです。

もし、給与以外の収入を得るようになると、誰も税務署に代わりに申告なんてしてくれません。1年間の収入を計算して、その収入を得るためにかかった経費を差し引いて「1年分のもうけ」を自分で計算しなければなりません。そして、その計算結果を翌年の3月15日までに「確定申告書」に記入して税務署へ提出するのです。

本来は、利益が少しでも得られるようになれば申告が必要なのではと思いますが、税務署の手間を省くために「税額が0円になる場合」や「副業の儲けが少額の場合」なら申告しなくてOKという特別ルールがあります。

国税庁のウェブサイトに「確定申告が必要な方」というページがありますが、このサイトを見ても「所得金額」など、見慣れない用語が色々と出てきて、見慣れていない方は自分の場合はどうなのか判定しにくいと思います。そこで、申告の要否をざっくりわかりやすくまとめました。

「給与の合計150万円以下」の条件は、厳密には「医療費控除などいくつかの控除を引いた残りが150万円以下」と書かれていますが、それを考え始めると皆さん混乱されるので、省略して「控除はなし」として記載しています。

税金の法律は細部まで全て正しく読み解こうとすると、とても難解になることが多いので、税金の法律を普段見慣れないという方は、このように簡略化してざっくりと捉えることも時には必要だと思います。どうか「税理士のくせにいい加減な解説するな!」と、怒らないでくださいね。

ここで注意していただきたいのは、上記はあくまで「所得税のルールである」という点です。

日本には、儲けに対してかかる税金には「所得税(国に納める)」と「住民税(住んでいる地域に納める)」の2種類があり、所得税では「申告しなくてOK」という場合でも「住民税は申告してよ!」ということがあります。住民税のルールはその都道府県や市区町村ごとでルールが違うので、ご自身の住んでいる地域ではどのような条件で、どのような方法で申告が必要なのか、お住まいの自治体にお問い合わせください。

ただし、所得税の確定申告書を提出すれば、そのデータが住民税の計算用データとして送られますので、住民税の申告は必要ありません。「住民税の申告をしないといけないのなら、所得税の確定申告出します」という方もいらっしゃいます。

また、事前に引かれている源泉徴収税額がある場合は、儲けが少額で申告不要の条件であっても、申告をした方が「所得税額が還付されてお得!」というケースもあります。申告は面倒だからといって、還付のチャンスを逃しては「なんて……嘆かわしい!」ですね。

申告のための準備

金額の大小を問わず、とにかく1月から12月までの年収を把握する必要があります。また、その収入をゲットするために支出した経費も集計します。

収入 ― 経費 = 儲け(所得)

その上で、収入を得る頻度や副業の割合などを踏まえて、「事業所得」か「雑所得」という所得の区分を決めて手続きを進めます。

例えば、収入が50万円でこれに対応する経費を30万円使ったという場合、収入から経費を引いて儲けが20万円と計算されます。年間50万円を得るために毎月4万円ほどの売上で1年間経常的に副業をしていたのなら、帳簿をしっかりとつけておくことで「事業」として営んでいると言えて「事業所得」として申告できます。ただし、事業所得とするためには税務署に「開業届」を提出する必要があります。基本的には開業日から1ヵ月以内に提出することになっていますが、遅れても受け付けてくれます。

一方、50万円を年に1回や2回ほどしか仕事をしていないというのなら「経常的」な事業とは言いにくいので、「雑所得」となります。雑所得として申告する場合は、1年間の収入の合計と、それに対応する経費の合計金額がわかれば申告書を作ることができます。経費の領収証などは5年間の保存が必要ですが、帳簿までつける必要はなく、合計金額が計算できていればOKなので、申告のハードルは低いですね。

事業所得として申告する場合、事業主として帳簿をつけておかなければなりません。青色申告なら「複式簿記」というキッチリとした簿記のルールに基づいた帳簿をつける必要があります。手間はかかりますが、その代わりに儲けから65万円を引いてくれる「青色申告特別控除」や、マイナスを3年間繰り越してくれる「繰越損失」など、税金が安くなる優遇制度があります。

白色申告の場合は簡単な帳簿でOKですが、優遇制度はありません。

青色申告で税金を安くしたいなら、開業日から2ヵ月以内、またはその年の3月15日までに「青色申告します」という申請書を税務署に提出する必要があります。この期限内に申請しなければ、はじめは白色申告で確定申告をすることになります。

令和5年の1月1日から青色申告にしたい場合は、令和5年の3月15日までに提出すればいいということです。今年から開業して青色にしたい、という方は期限を守って書類を提出しましょう。

青色申告の承認申請について、詳しい手続きの方法は国税庁のウェブサイトを、メリットについては過去の連載をご覧ください。

いざ、申告!

「所得税の確定申告」は税務署で行います。以前は、税務署で申告書の用紙をもらってそれに手書きして提出していましたが、いまはe-Taxという「電子申告」のシステムがあるので、自宅にいながら申告書を提出することもできます。

「作成開始」ボタンからスタートし、質問に答える形式でボタンをクリックしていくと、申告書が作成できます。電子データで提出したい場合は、スマートフォンとマイナンバーカードを使って提出できます。e-Taxにパソコンなどで入力したデータからQRコードをスマホで読み込み、スマホのマイナポータルアプリと連携させて電子申告データを提出することができます。

画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」より引用

過去に税務署や申告相談会場などでパソコンに入力する方法で確定申告したことがある方や、過去に電子申告をしたことがある方など、電子申告用のIDとパスワードを持っている方は「ID・パスワード方式」という簡単な方法で電子申告データを提出できます。

画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」より引用

見本のような「利用者識別番号」という16桁の番号をもらったことがあれば、IDとして入力しすることで電子申告できます。マイナポータルアプリとの連携は、アプリのインストールやマイナンバーカードの設定など少々面倒な手順もある上、エラーなどのトラブルも報告されていますが、ID・パスワード方式なら、これらを入力するだけで電子データをネットで提出できますので、スマートフォンを使った提出方法よりも簡単でオススメです。

画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」より引用

雑所得で申告する方は、給与の源泉徴収票と1年間の収入と経費の合計を集計したものがあれば、一番左の赤いボタン「所得税」から確定申告書を作成することができます。

事業所得で申告する方は、1年間帳簿をつけて売上や経費の集計表を作ってから出なければ申告書の作成ができません。この集計表のことを「青色決算書」、または「収支内訳書(白色申告の場合)」といいます。これらは、経費について「どんな経費がいくらか」を集計しなければなりません。「仕入」「消耗品費」「交際費」「通信費」「旅費交通費」など、どの経費がいくらかを帳簿から集計するのです。

集計表ができたら、左から2番目の青いボタン「決算書・収支内訳書」に進んで、まずはその集計表の作成を行なってから、確定申告書の作成を始めることになります。集計表ができたら、集計表の損益の計算結果(儲け)から所得を申告書の方に転記して、申告書の作成が続けてできます。

e-Taxのサイトは毎年少しずつ改良されていますが、まだまだ税金の申告を初めてされる方には難しいことばがたくさんあると思います。でも、手元に資料がしっかりそろっていれば、それを見ながら正しく確定申告書を作成できるはずです。源泉徴収票や損益の集計表などをしっかり準備して取り掛かってみてください。

よくある質問も、かなり詳しく質問に回答してくれますので活用しましょう。また、税務署に相談することもできます。申告期限の3月15日近くなると全く電話が繋がらなくなりますが、早めの時期なら問い合わせることも可能なのでどうしても先に進めなくなった時は問い合わせてみてください。


確定申告は、ギリギリに申告書を作成すると、提出期限にサーバーにアクセスが集中して繋がらなかったり、問い合わせの電話も繋がらなかったり……と、いいことはありません。早めに準備して、早めに提出できるようにしていきましょう。

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