加藤厚労大臣「環境できてきた」 5類引き下げ見直し検討へ…現場の医師は

政府は新型コロナの感染症法上の位置付けをインフルエンザと同じ「5類」へと見直すことを検討しています。この引き下げについて、コロナと最前線で闘う現場の医師はどのように感じているのか取材しました。

東京都内で1月17日に確認された新型コロナの新規感染者は1万1120人で、病床使用率51%、重症者用の病床使用率は33.9%となっています。こうした状況の中、政府が検討しているのが新型コロナの感染法上の位置付けの「5類」への引き下げです。この日、加藤厚労大臣は会見で「位置付けにかかる基本的な考え方について(専門家に)議論いただいた。議論を重ねてきていることを踏まえ、準備が一つ一つできている。ただ、見直しの時期については感染状況等も踏まえて判断していく必要がある」と述べ、引き下げについて「環境ができてきた」とした上で、見直しには「一定の準備期間が必要」との考えを示しました。

一方、コロナの最前線で闘う医師は現状を踏まえ、5類への引き下げをどのように考えているのでしょうか。江東区にあるあそか病院の白石広照医師は「コロナ専用病床の受け入れについては100%以上の病床使用率となっている。当院としては医療体制は逼迫(ひっぱく)している」と話しています。その一方で、第8波では入院患者の年齢や症状が以前の流行期と変わってきたといいます。白石医師は「14床使用している患者は80代から90代の軽症から中等症の高齢者が中心」とした上で「これまでの流行を振り返ってみると、段階的に軽症化しているような印象を受ける。特に若い人は入院が必要のない人が増えている」と指摘します。

こうした状況を踏まえ、白石医師は「高齢者や基礎疾患のある人などのフォローアップ体制を整えつつ、2類から5類に引き下げるべき」と話しています。白石医師は「2類のサポートが必要なのは高齢者・基礎疾患・高度肥満のある人に限定されている」「若年層に関しては通常の風邪と変わらなくなってきているので、2類相当のフォローアップは必要ないと考える」と話しています。そして「コロナ専用病床は残しつつ、年齢別に2類から5類に引き下げていくのが適当かと思う」と語りました。

<第8波で死者増加 日本の課題は?>

都内の新型コロナ感染状況は1月11日以来、前の週の同じ曜日を上回る1万1120人が新たに確認されました。病床使用率はいまだに50%を超えていて、感染が確認されたうち、28人の死亡が報告されています。一方、インフルエンザも新年を迎えた後も増加傾向が続いています。

新型コロナの治療薬が出てきているのに、第8波で死者数は過去最多になっています。これについて有明みんなクリニック理事長で医師の小暮裕之さんは潜在的な感染者の多さや手続きの煩雑さ、薬の供給量が少ない、使用実績の少なさから様子見をしている人が多く、処方されていない現実があるといいます。

こうした状況の中、加藤厚労大臣は5類への引き下げについて言及しました。17日の閣議後会見で加藤大臣は2類相当から5類への見直しについて「専門家からは適正な医療を提供し続けることが重要な課題」だとして、位置付けの見直しは段階的に行うことを求められていることなどを挙げ「議論を重ねて準備が一つ一つできている」と述べました。ただし、見直しの時期については「今後の状況を見極めた上で」として、明言を避けています。

政府のコロナ対応について小暮医師は「コロナはすでにコモンディジーズ(日常でかかる頻度の高い疾患)になっている」として、早く5類への変更などを検討すべきとしています。また、現状の「隔離方針」のルールでは持続性がないと指摘しました。

日本国内で新型コロナが確認されてから4年目を迎えます。いつになったら日本は「コロナ禍」を抜け出せるのか、政府のかじ取りに懸かっています。

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