B2初参戦で「らしさ」発揮 長崎ヴェルカ 前半戦総括 PO圏内、18日から後半戦 

第11節の越谷戦でスチールを狙うヴェルカのギブス。後半戦も好守から主導権を奪いにいく=長崎市、県立総合体育館

 バスケットボールBリーグ2部(B2)の2022~23年シーズンは8日の16節で前半戦が終了した。B2初参戦の長崎ヴェルカはリーグ戦全60試合中30試合を消化して、通算19勝11敗の西地区2位。東地区も含めた14クラブ中4位で、上位8クラブが進むプレーオフ圏内につけている。きょう18日からは後半戦がスタート。プレーオフ優勝と1部(B1)昇格を狙える力を示しながら、課題も見えたヴェルカの前半戦を総括する。

■何もさせない
 昨年9月、開幕直前に組まれたB1勢とのプレシーズンマッチ2試合は、新型コロナウイルス感染拡大の影響でホーム開催の島根戦が中止。もう1試合の滋賀戦は勝ったものの、体調不良者が相次いだヴェルカは8人で試合に臨み、戦術の十分な確認ができないまま本番を迎えた。
 それでも、昨季の3部(B3)を制した主力がほとんど残ったチーム。持ち味の攻守の切り替えの速い「ヴェルカらしさ」を、B2でも存分に発揮している。1試合平均89.4得点はB1も含めてトップ。現時点で3点シュートを放った数が千本を超え、1試合平均で10本以上決めているのもヴェルカだけだ。
 チームの生命線となっているのは積極果敢なディフェンス。「相手に何もさせない」をテーマに、パスカットまでの連係の良さ、勝負どころで仕掛けるプレスの強度は健在だ。スチールの1試合平均9.67本はリーグトップで、相手のミスから仕掛ける速攻は他クラブの脅威になっている。
 ホーム入場者数も1試合平均約2千人とB2最多。クラブは「試合展開に応じて、盛り上がるべきタイミングでもっとこちらから仕掛けていきたい」と場内のさらなる一体感づくりを目指している。

前半戦の戦績

■高さへの対応
 誤算だったのは選手の相次ぐ故障。昨年11月末にチーム最長身で204センチのアギラール、司令塔として成長中だった24歳のタリキが故障者リスト入りした。身長2メートル台が2人だけのチームにとって、特にアギラールの離脱は痛かった。
 クラブはアギラールのけがの完治を優先して、12月末までLJ・ピーク、現在はテレンス・キングを臨時的に補強した。だが、いずれもヴェルカの速いテンポに合った選手で身長は190センチ台。高さのある相手に対しては、徹底的にゴール下へのパスを防ぐ「先手」の守備で勝負してきたものの、上位対決ではなかなか結果を出せなかった。
 ヴェルカより白星が多い東地区首位のA千葉と2位の越谷、西地区首位の佐賀とは、ここまで計10試合を戦って3勝7敗。前半戦最後の越谷との2連戦はどちらも接戦を落とした。前田監督も「選手は非常にファイトしてくれたが…」と悔しさを隠さなかった。
 ファウルトラブルでコートに立つ選手の時間配分が崩れ、攻守のリズムを失っているのも課題の一つ。B2最多となるファウル数の計667個は、一人一人の積極性の裏返しであるものの、上位チームはここ一番のフリースローを外さない。激しいプレーを続けながら、接点については修正が求められている。

■目の前に全力
 きょう18日は午後7時から、長崎市の県立総合体育館で西地区3位の熊本と対戦する。前回は開幕戦で対戦して1勝1敗。1試合平均得点でB2首位の外国人選手を、先手の守備でいかに止められるかがポイントだ。
 豊富な運動量に裏付けられた速さ、激しさで、目標のB1昇格を手にするために。主将の髙比良は「(前半戦は)プレーオフや先のことを見据え過ぎて、目の前のことがしっかりできていなかったようにも思う。“ヴェルカとは試合したくない”と思われるくらいプレッシャーをかけていかないとB2では勝てない。もっとチーム内で競い合って、勝ち負けにこだわっていく」と気合を入れ直している。

◎経験豊富 背中見せる「パパ」 フォワード野口 成長に意欲

自身のさらなる成長に意欲を見せるヴェルカの野口=県立総合体育館

 20代のチームメートから「パパ」と親しまれているベテランの存在感が、日に日にコートで大きくなっている。元日本代表で5月に40歳を迎える野口は今季、その豊富な経験を生かしながら、チームのピンチを何度も救ってきた。
 B3での昨季は「悔しかった」。身長196センチのフォワードはなかなか調子を上げられず、外国人選手を休ませるための交代要員や、快勝した試合の終盤を任される役割がほとんどだった。
 1年かけてヴェルカの戦術に体がなじんだ今季は、プレーの質が変化。左利きの滑らかなフォームから放つ3点シュートなどで得点を重ね、ボンズ、ギブスらスコアラーのマークを分散させている。シーズン前半戦最後の越谷戦は先発出場。試合前はロッカールームで誰よりも長くストレッチに時間をかけるなど、日々入念に準備する姿が、スタッフ陣の信頼を得ている。
 自らを「大器晩成型」と評しており、これからまだまだ伸びていくという意欲を持っている。同じポジションのウィタカら若手の成長も楽しみで「ルーズボールだったり、外国人選手と戦ってる姿を背中で見せる。そういうのはやっぱり意識している」。「パパ」が後半戦のキーマンになる。


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