北海道 ひとつのことを“究める”企業 成功の理由は?

今回の特集は「ひとつの商材・商品だけを扱い続けている企業」を紹介する。北海道にも、ひとつのことだけを追求することで成功している企業が複数存在する。その理由と情熱を取材した。

【コチョウラン一筋 赤平オーキッド かつては経営危機も】

赤平にある、こちらの会社。大きなビニールハウスが並んでいる。

その一つを覗くと、並んでいるのは、全て胡蝶蘭の株。

社名は赤平オーキッド。全部で12棟、約6000平方メートルのビニールハウスの中で作っているのは、なんとコチョウランだけだ。出荷までの期間は5カ月。肥料はあまり必要なく、与えているのは、水のみ。地中熱を活用しハウス内の温度は常に一定に保っている。

3カ月たって顔をのぞかせたのが、このあと花を付ける芽の部分。この芽がまっすぐに成長していくよう針金で固定する。この作業は、手作業。開花後の花の付き方をイメージして固定していく。ハウス内にあるのは1万2000株ほど。手間のかかる作業を、ベテランのスタッフが次々とこなしていく。

そうして出来上がった、見事なコチョウラン。毎週3000~4000株を北海道各地へ出荷する。

赤平オーキッドはもともと、市の第3セクターとして創業。石炭産業に代わる新たな産業にと出発したのだが、赤字体質だったことから2008年にホームセンター大手DCMのグループに。その後、販路を少しずつ拡大。今ではホーマック各店のほか北海道各地の青果店や葬儀店にも卸し、売上高も大きく増えた。

比留間取締役は「毎年製造コストを見直し、販路を広げることで売り上げを確保でき、6~7年前から利益をしっかり残せる体質へと変わっていった」と振り返る。店頭での価格は3万円ほどするが、最近は贈答用としての需要が高まっているという。2021年度の売上高は3億4600万円に達した。

比留間取締役は「公社時代からの譲渡を受けた建物、施設があり、ヒトがいて、台湾との輸入のネットワークもある。こうした強みを生かしてコチョウランの生産を続けていく」と話す。

【“たもぎ茸”で日本一 給食に健康食品も】

空知の南幌町にある、こちらの会社。ずらりと並んでいるのは、たもぎ茸というキノコ。スリービーはたもぎ茸生産量日本一の知る人ぞ知る会社だ。

石田社長によると「たもぎ茸は天然に自生している、北海道独特のキノコで、アイヌ語でチキサニカルシと言う。ヒラタケの一種で、出汁がよく出て味もいい」と言う。

パック詰めしたものは、北海道の食品スーパーで買うことができる。毎日4000個ほどを箱詰めして市場に出荷する。また、火鍋の専門店やうどん店などにも卸しているのだとか。

容器の中におがくずを詰め、たもぎ茸の菌を植え付けた後培養室で保管。10日ほどで菌糸が全体に行き渡る。そこからさらに10日ほど過ぎると立派なキノコへと成長する。

10日ほどで菌糸がいきわたる

形が崩れるなどの理由でそのまま売れないものは水煮に。小中学校の給食用として全国各地に出荷している。

販路は北海道の外にも

1985年創業のスリービー。売り上げは当初5000万円ほどだったが、今や4億5000万円にまで成長。生のたもぎ茸の生産と学校給食用の水煮作りが主力かと思いきや…実は合わせても売り上げに占める割合は3割ほど。残りの7割はというと…?

見せてくれたのは、「バイオゴッド」という何やらすごそうな名前の商品。たもぎ茸を原料とした健康食品だ。スリービーの売り上げは、こうした数々の健康食品が7割を占めている。その代名詞とも言えるのが2001年から販売しているバイオゴッド。健康をサポートする効果があるというたもぎ茸の成分を抽出したエキスだ。

30袋入りで2万円を超える高額商品なのだが、これまでに100万パックを販売。大手メーカーとのコラボ商品も用意している。たもぎ茸で成長を続けるスリービー。今後もこれ1本に経営資源を集中していく方針だ。石田社長は「たもぎ一本にすることで研究開発に集中でき、品種改良にも集中できる。北海道を代表するようなキノコの会社になりたい」と話す。

【イチゴを究めた日本最北の上場企業】

上川の東神楽町。事務所の脇にある冷蔵庫の中へと案内してもらうと、中には大量のイチゴが。

会社名はホーブ。全国の市場から業務用のイチゴを仕入れパンメーカーや菓子店に提供しているイチゴ専門の卸会社だ。この日は4000パックほどが保管されていたが、クリスマス時期にはこの10倍以上が並ぶという。

業務用が主なため、味はもちろん見た目も重要なポイントだ。取引先は北海道だけで約70社。とちおとめ、にこにこベリーといった品種を主に扱っている。創業は1987年。創業直後に1億円ほどだった売上高は今では26億円に。日本最北の上場企業としても知られる。

その成長のきっかけとなったのが、それまでになかった、夏場でも栽培できるイチゴ、ペチカという品種の苗の開発だ。

もともと、植物の新たな品種を作る仕事に携わってた高橋会長。今の主力は大玉の夏イチゴ「夏瑞」だ。実験室のような部屋で苗を作り、北海道各地の40の生産者に春先に販売。イチゴが品薄になる夏から秋にかけて栽培してもらい、全て買い上げて百貨店やメーカーに卸しているという。

今取り組んでいるのが、植物工場で栽培できる新たな品種の開発。成功すれば、都会の真ん中でもイチゴづくりが可能になるという。

イチゴ一筋で成長を遂げたホーブ。これからもイチゴ一本で勝負する考えだという。高橋会長は「イチゴに関しては絶対に負けないという自信はあるが、その他の作物になったら自信がない。イチゴは私の人生の全て」と話す。

【MC杉村太蔵さんの一言】

MCの杉村太蔵さんは「好きこそ物の上手なれ」と話した。ひとつのことに集中することは、ノウハウが蓄積されやすい一方でリスクも集中する。成功するためには、究めることに情熱を注げる「好き」という気持ちが不可欠なのかもしれない。
(2023年1月21日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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