【Catch the Moment ⑨】チームの喜びが爆発した瞬間も、ピントは主役に

大きなフィールドで、一球一球何が起こるか分からないのが野球。試合中の最高の瞬間を捉えるのは困難である。その中20年以上MLBカメラマンとして活躍する田口有史がこれまで捉えた「最高の一瞬(Moment)」を一話一枚ずつ紹介する。

サヨナラ勝ちの瞬間というのは、殊勲の選手に向けてダグアウトから選手たちが飛び出してきて、フィールド内でセレブレーションが起こる。チームとしての喜びが爆発した瞬間を撮れる絶好の機会だ。

この時はミルウォーキー・ブリュワーズがサヨナラ勝ち。自身の撮影位置はそのブリュワーズのベンチ側だった。打ったウィリー・アダメスは熱いプレースタイルも含めて、チームリーダーの一人と目されるタイプ。ダグアウトから駆けつけるチームメイトたちに向かって最高の表情を見せてくれると予想して、打った直後からヒットになったかはわからないものの目を切らずにレンズで追った。

How to “Catch the Moment”

アダメスを追いながらも、そこに駆け寄っていく選手たちはファインダーの中で確認しながら、オートフォーカスをオン、オフしながら、ダグアウトから飛び出す選手たちの背中にピントを持っていかれず、主役のアダメスにピントが合い続けるように工夫する。

巨漢ながら、いの一番にアダメスに駆けつけたロウディ・テレスに飛びつくアダメス。そこに駆け寄る選手たちの背中を写し込こむことによって、サヨナラ勝ちの喜びの勢いを表現できた。

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