中川晃教主演 明治座創業150周年記念 ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』上演中 若き日のチェーザレ・ボルジア、その心意気。

ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』が明治座にて好評上演中だ。
原作は『チェーザレ 破壊の創造者』(イタリア語: CESARE Il Creatore che ha distrutto)、惣領冬実によるイタリアを舞台にした歴史漫画。監修はダンテ研究者の原基晶。チェーザレ・ボルジアを中心に、架空の人物を織り交ぜつつ、当時の権力者・有名人の群像劇を描いている。

この物語の主人公であるチェーザレ・ボルジアはスペインのボルジア家出身のローマ教皇アレクサンデル6世の庶子。教皇となった父の保護のもと、聖職者となり、18歳で枢機卿に任じられる。彼を描いた作品は、この惣領冬実原作コミックの『チェーザレ 破壊の創造者』はもちろん、塩野七生の小説『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』も有名。1498年から1507年までという短期間に、まさしく栄枯盛衰を体現した人物。このミュージカルではチェーザレ・ボルジアの青春時代を描いている。
時代はルネサンス、この頃、日本は戦国時代だが、ヨーロッパも激動の時代、ルネサンス。舞台は壮大でドラマチックな楽曲で幕開き。チェーザレ・ボルジアが誕生するが、父はロドリーゴ・ボルジア、時の権力者、だが、庶子。キリスト教世界では不義の子とされているため、ロドリーゴの権勢を後ろ盾にしても制約がある。
1491年11月、ピサのサピエンツァ大学に16歳の青年アンジェロ・ダ・カノッサが編入してくる。彼は世間知らずで空気が読めない。メディチ家の子息・ジョヴァンニの面子を潰してしまい、仕返しに、ジョヴァンニに誘われた馬の遠乗りでアンジェロは騎乗している馬を暴走させられ、崖に落ちそうになる。だが、その寸前に一人の青年に助けられるが、彼こそがチェーザレ・ボルジアであった。
主人公はチェーザレ・ボルジアであるが、彼を中心とした群像劇の形をとっている。そしてこの時代のことも丁寧に描いており、ヨーロッパ史に詳しくなくてもわかりやすくなっている。映像演出も駆使、当時の絵画などが映し出される。陰謀や権力闘争が渦巻く時代。大学もまた、この世界の縮図のようなところ、差別や対立が横行する。その中で若きチェーザレやその仲間たちや彼を取り巻く人々の思惑、行動、多彩なミュージカルナンバーによって紡がれていく。チェーザレはここではスペイン団の団長。フィオレンティーナ団の団長ジョヴァンニとはライバルの関係にあるが、基本的にはジョヴァンニとは友好的な間柄。冷静沈着で大人びた雰囲気、だが、年相応な一面も見せる。そしてスペイン出身らしく内なる激情も感じる。これを中川晃教が抑制の効いた演技と圧巻の歌唱で魅せる。

そして空気が読めないアンジェロ、無邪気さ全開、正論を吐き口論になるシーンなど、舞台のアクセントに。原作では作品全体の狂言回しの役割を担っている。スクアドラ ロッサで観劇、赤澤遼太郎(アンジェロ)、鍵本 輝(ジョヴァンニ・デ・メディチ)、本田礼生(ドラギニャッツォ)、健人(ロベルト)。若手、健闘ぶりが光る。また、チェーザレ・ボルジアは教皇の息子として実権を振るい、権謀術数をつくした人物として知られているが、ここでは社会をよくするために自分に何ができるのか、そしてルネサンスの時代、彼は「自然」に目を向ける純粋な性根の人物として描かれている。時折”大人たち”が登場、当時のイタリアは周辺の列強諸国による干渉にさらされ、またカトリック教会は権力闘争の場。ロドリーゴ・ボルジア演じる別所哲也始め、ジュリアーノ・デッラ・ローヴェレの岡 幸二郎らが重厚な演技で脇を固める。そのほか、ダンテを演じる藤岡正明、ロレンツォの今拓哉ら、ミュージカル俳優ががっちりと。また、ミュージカル初の橘ケンチ(EXILE)、チェーザレを支える人物・ミゲルを演じていたが、的確な演技と存在感が印象的であった。

コロナ禍の影響でようやく上演に漕ぎ着けた本作、その間に現代も大きく変わり、原作も完結。それに合わせて「Up to date」したそうだが、そこが舞台の強み。島健の多彩な楽曲が物語に厚みを加える。ポップなものから難易度の高い、歌い上げるオペラのような楽曲もあり、グランドミュージカルらしい。明治座初の生オケも嬉しい。オリジナルミュージカル、コミック原作なので「2.5次元」に分類されるが、明治座らしい、重厚で見応えのある歴史もの、大変かもしれないが、再演してほしい演目。
またロビーではジェラートが販売、これが大人気、休憩時間は長蛇の列になるので開演前にぜひ。普段は販売しないワインやオリーブオイルも。観劇の記念に。撮影スポットも用意、こちらもぜひ。

概要
明治座創業150周年記念
ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』
日程:2023年1月7日〜2月5日
原作:惣領冬実『チェーザレ 破壊の創造者』(講談社「モーニング」所載)
原作監修:原基晶
脚本・作詞:荻田浩一
演出:小山ゆうな
作曲・音楽監督:島 健

出演:中川晃教
橘ケンチ(EXILE)
[スクアドラ ヴェルデ] 山崎大輝 風間由次郎 近藤頌利 木戸邑弥 (W キャスト)
[スクアドラ ロッサ] 赤澤遼太郎 鍵本 輝 本田礼生 健人 (W キャスト)
藤岡正明 /今 拓哉 丘山晴己 横山だいすけ/ 岡 幸二郎
別所哲也
山沖勇輝[スクアドラヴェルデ]稲垣成弥[スクアドラロッサ] 武岡淳一

公式サイト:https://www.cesare-stage.com

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