2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県矢掛町で、災害発生時に開設する避難所の生活環境向上を図ろうと、運営を支える人材「避難生活支援リーダー・サポーター」の育成事業が進められている。災害関連死ゼロを目指し、内閣府が本年度、全国5自治体でスタートしたモデル事業。3日間の研修を経て修了証を交付、緊急時に避難所運営を担ってもらう計画だ。
西日本豪雨の県内犠牲者は95人。このうち災害関連死と認定されているのは34人(22年7月現在)。国の有識者会議が21年5月にとりまとめた防災に関する提言では、関連死ゼロに向け避難所生活のストレスを減らすことが求められることや、避難所運営の担い手不足が課題だと指摘。解決に向けた第一歩として「避難生活支援リーダー・サポーター」の育成制度を設けた。
矢掛町では昨年11月に避難所の基礎知識などを学ぶ講座があり、今月14、15日には、町B&G海洋センター(西川面)でワークショップを開いた。
自治会の防災担当や防災士ら約60人が受講。同センター体育館を、災害発生1カ月後で150人が身を寄せている避難所に見立て、受付や食事スペース、寝床などを再現し、避難者役も配置。受講者が避難者役に話しかけ、避難所の改善点を考えた。支援物資を活用し、プライバシーが配慮されていなかった寝床に仕切りを設けたり、全体の動線を見直したりした。
実際の避難所でコーディネーターを務めた経験もあるNPO法人の講師らが「食事スペースは気持ちを切り替えられる場。衛生環境に気を付け、明るい雰囲気になるよう心がけて」などと助言した。
受講した、三谷地区の市場自主防災会の藤原立志会長は「コミュニティーの維持やプライバシーの配慮など避難所運営の難しさを痛感した。経験を地元に還元したい」と話していた。
国は来年度から研修会を10自治体に拡大し、人材育成を加速させる。今後は、実際に避難所運営が必要となった場合、修了証を交付された受講者対象にボランティアを募る仕組みなども検討するという。
内閣府の前川紘一郎企画官は「矢掛町などで実施した初年度の研修会をベースに、全国に取り組みを広げ、『災害関連死ゼロ』を目指したい」と話している。