全国魅力度37位…福井県なぜ知名度上がらない 恐竜など素材あるけど「見せ方」に問題

【グラフィックレコード】あいまいな観光戦略
新幹線の車窓から見える場所に設置された恐竜と越前がにのモニュメント。観光資源の効果的な発信が誘客の鍵=2022年12月、福井県の福井市観光交流センター屋上

 2022年11月、インバウンド(訪日客)向け情報サイトの米国人記者2人が福井県の招きで県内を巡り、勝山市の白山平泉寺や大本山永平寺を「スピリチュアル(精神的)」と高く評価した。米国で寺や「ZEN」文化への関心は高く、福井の魅力を発信したいという。ただ、と女性記者はつぶやいた。「多くの米国人はまずは京都や奈良を選ぶ。知名度が全く違いますから」

 福井県は北陸新幹線延伸を見据え、インバウンドの取り込みを図る。しかし現状は厳しい。観光庁の19年度調査によると、福井県を観光目的で訪れた外国人は全体の0.2%で高知と並び全国最少だった。

 記者の招待は東京観光財団と連携して行った。同財団は北陸新幹線を誘客の起爆剤にしようと、東京と沿線各地を結ぶ観光ルートの開発を進めている。担当者は話す。「あえて福井を旅先に選ぶ魅力があるか。インバウンドも国内客も、観光客の目はシビアだ」

 ブランド総合研究所(東京都)の全国魅力度ランキングで22年度37位だった福井県。田中章雄社長(福井市出身)は、福井の知名度が上がらない最大の理由に「オンリーワンがない」ことを挙げる。調査は89項目に及び、福井が1桁に入ったのは伝統工芸品などが思い浮かぶかを意味する「産品想起率」の8位のみ。総合10位の石川はこの項目で京都に次いで2位だ。

 福井の最高は15年度の31位。この時は「恐竜王国福井」を前面にPRしたことが影響したと分析する。「福井には日本屈指の素材が恐竜以外にも多い。問題は見せ方」と話す。

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 「誰に情報を届けるか、ターゲットのあいまいさが福井の課題」と指摘するのは、信州大学特任教授(ライフスタイル学)で福井県立大学客員教授の鈴木幹一さん。長野県軽井沢町に建つ別荘所有者の集まり「しらかば会」では会長を務める。

 鈴木さんは「東京に対しやみくもに魅力を訴えても、膨大な情報の渦に埋没するだけ」とし、戦略の一つとして北陸新幹線駅がある軽井沢町への発信強化を提案する。

 しらかば会では福井旅行が毎年の恒例。海の幸に加え、奥深い歴史を誇る寺社や伝統工芸といった「一流のコンテンツ」は旅慣れた“別荘族”を、十分引きつけると力説する。

 軽井沢の年間観光客850万人の7割は東京在住。福井と一体化した広域旅行プランを打ち出せば、もともと旅行意欲の高い首都圏の観光客を越前若狭へ引き込める。「この上なく効率的なターゲットだと思いませんか」

 「福井への近さ」をPR材料に加えることで、軽井沢側の観光誘客にもメリットがあるという。双方の調整を進め22年3月、福井県と軽井沢町は連携協定を結んだ。「東京-軽井沢-福井の新たな観光経済圏ができたら面白い。魅力を磨くまたとないチャンスだ」

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