朝乃山、力なく初黒星 大相撲初場所11日目

大翔鵬に寄り切りで敗れた朝乃山(右)=両国国技館

 大相撲初場所11日目は18日、東京・両国国技館であり、元大関で西十両12枚目の朝乃山(28)=富山市出身、高砂部屋=は、西十両6枚目の大翔鵬(だいしょうほう)(28)=モンゴル出身、追手風部屋=に寄り切られ、今場所初黒星を喫した。初日からの連勝は10で止まり、十両の優勝争いは朝乃山と東5枚目の金峰山(きんぼうざん)(25)=カザフスタン出身、木瀬部屋=が10勝1敗で並んだ。

 朝乃山は立ち合いで取った左上手をすぐに切られ、相手が十分な体勢に。前に出られて右からのすくい投げを試みたが、逆に引きつけられて体が伸び上がり、力なく土俵を割った。取組後のリモート取材で「上手を切られ、相手が先に形をつくってしまったのが反省点」と振り返った。

 十両は大翔鵬と東13枚目の湘南乃海(しょうなんのうみ)(24)=神奈川県出身、高田川部屋=が2敗で追う。朝乃山は12日目の19日に湘南乃海と対戦する。両者は22年秋場所と九州場所で顔を合わせ、いずれも朝乃山が寄り切りで勝利している。

■恩師命日 白星届けられず  元大関が土俵下に落ちると、館内がどよめいた。今場所初黒星に思わず顔をしかめた朝乃山は、取組後の取材に「硬かったというか、集中負けっていうか…。僕の弱いところが出た」と悔しさを押し殺すように語った。

 18日は2020年に55歳で急逝した近畿大相撲部時代の監督、伊東勝人さんの命日だった。「あまり意識しないようにした」と言うものの、前日までと違って動きに精彩を欠き、完敗に近い内容だった。

 報道陣から恩師に白星を届けたかったかと問われると、「悔しいです」とひと言。昨年の初場所は謹慎中だったことも振られ「もっと相撲を取って、いい成績で監督に恩返ししたい」と前を向いた。

 優勝争いは1敗が自身を含め2人、2敗が2人の構図となった。19日は2敗の湘南乃海と組まれ、1敗の金峰山との対戦も残す。再び白星を重ねることができれば、1場所での幕内復帰の可能性はある。「あと4日ある。切り替えてやりたい」と朝乃山。自身やファンが望む1日も早い幕内復帰へ、正念場を迎える。(七瀬智幸)

■気持ち切り替え大事/杉山の目  2桁勝ってほっとしたわけではないだろうが、今日は昨日までと比べて何か気迫が感じられなかった。

 右四つになったが、上手が取れず、187キロある大きな腹の大翔鵬に体を寄せられ、後手に回ったまま、黒房下に寄り切られてしまった。

 動きが止まった時、自分から上手を探るなり動くべきだったが、相手に先に動かれてしまった。

 本人は悔いが残るだろうが、10連勝したこれまでのことは忘れて気持ちを切り替えることが大事だ。明日から初日の気持ちで臨んでほしい。(相撲ジャーナリスト・杉山邦博)

■地元「残り全勝を」  連勝を伸ばしていた朝乃山の黒星に、地元からは「がっくりきた」と悔しがる声が聞かれ、「切り替えて残り全勝してほしい」と願う人もいた。

 朝乃山富山後援会の青木仁理事長(46)は「相手に研究され、本人もあまり集中できていなかったのではないか」と推し量った。1敗での優勝でも来場所に幕内復帰できる可能性があるとし、「朝乃山が目指すのは幕内の最高位。焦らず確実に1勝を重ねてほしい」と願った。

 初土俵から応援してきた県警OBらでつくる「富山を楽しくする会」の事務局長、長谷川敏博さん(71)は「ここでの1敗は大きい」と声を落とした。敗戦翌日の取組が重要とし「不安も増すと思うが、負けを引きずらず集中してほしい」と話した。

 朝乃山の地元、呉羽地区で自治振興会長を務める北森正誠さん(74)は「残念だが1敗は仕方ない。これを反省材料に、残り全勝して幕内に上がってほしい」とエールを送った。

■千代獅子は5勝目  県関係力士は、東三段目43枚目の坂林(高岡市出身、尾上部屋)が負けて1勝5敗。西三段目56枚目の常川(南砺市出身、荒汐部屋)も黒星で3勝3敗。西三段目76枚目の飛騨野(富山市出身、荒汐部屋)は負けて1勝5敗となった。

 西序二段筆頭の千代獅子(富山市出身、九重部屋)は勝って5勝1敗、東序二段4枚目の旭水野(朝日町出身、大島部屋)は白星で2勝4敗。東序二段16枚目の千代烈士(南砺市出身、九重部屋)は勝って3勝3敗。東序二段89枚目の霧乃華(高岡市出身、陸奥部屋)も白星で4勝2敗とした。

大翔鵬に寄り切られ初黒星を喫した朝乃山(右下)
取組後に悔しそうな表情を見せた
11日目も大勢のファンが朝乃山を応援した

© 株式会社北日本新聞社