電動化初年度もヨコハマタイヤがサポート。開幕予定だった“港湾”市街地戦は8月に移動/STCC

 今季2023年より完全電動化を表明し、新たにBEVシリーズに生まれ変わるSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権に向け、公式サプライヤーとして引き続きヨコハマタイヤが指名された。また年間カレンダーの改訂版もアナウンスされ、記念すべきEVシリーズ開幕戦はヘルシンボリ市街地近郊の“港湾地区”でスタートする計画だったが、人気コンサートとの日程衝突を避けるべくスケジュールを再調整。新たにファルケンベリが新時代のオープナーを務める。

 2009年以来、幾度かの中断を挟んで断続的にSTCCヘのタイヤ供給を担ってきたヨコハマは、この北欧を代表するシリーズがTCR規定を採択した2017年以降も、ワンメイク・サプライヤーの地位を維持してきた。

 そのチャンピオンシップが、来るシーズンに向け完全に電動化されるのを受け、ヨコハマタイヤのスウェーデン法人CEOを務めるゴラン・ベングトソンは「STCCとともに歴史的な一歩を踏み出すことを楽しみにしている」と抱負を述べた。

「我々は、チャンピオンシップの電動化において、パフォーマンスとエンターテインメントの両面で高まる需要を満たす、高性能タイヤを供給するつもりだ。スカンジナビアで最も権威あるレーシング・チャンピオンシップとの協力により、当社製品の究極のマーケティング・プラットフォームが得られる。これは、トラックの内外での電動化に対するSTCCの独自の焦点によって、さらに強化されるだろう」

 そのコメントに応じたシリーズCEOのミュッケ・ベルンも、STCCが完全電動化を果たすBEV時代に突入するにあたり「ヨコハマとの成功した協力関係を継続し、深めることができて非常にうれしく思う」と信頼を寄せる。

「モータースポーツと、電動化された高性能車両。その両方のタイヤ開発と製造におけるヨコハマの豊富な経験は、2023年以降のチャンピオンシップ電動化において重要な役割を果たすはずだ」

 そんな2023年のSTCCでは、強豪PWRレーシングが運営する研究開発部門『EPWR』社が開発した電動パワートレインの“Kit”を組み込んだ車両が使用されるが、最高出力550PS想定のモーターにより0〜100km/hは3秒以下、最高速も300km/hをマークする。そのリヤ駆動キットには800Vの高電圧を利用する45kWhのリチウムイオンバッテリーの搭載が予定され、サプライヤーには元WRCドライバーのマンフレッド・ストール率いる技術企業STARD(ストール・アドバンスド・リサーチ・アンド・ディベロップメント)が指名されている。

 このオフの期間に、その新型車両開発にも使用されているヨコハマ製ワンメイクタイヤは、晴雨兼用の1スペックとなり、年間を通じてウエットとドライの双方の状態で使用する単一のコントロールタイヤが供給される。

すでに『BMW i4』や『VW ID.3』、そして『テスラ・モデル3』などの参戦が発表されている
「ヨコハマとの成功した協力関係を継続し、深めることができて非常にうれしく思う」と、シリーズCEOのミュッケ・ベルン(左)

■2023年の改訂版カレンダーも発表。公式テストを学生に開放する案も

「新しいタイヤはドライバーとして運転するのが非常に楽しいだけでなく、スペクタクルなレースを提供するため、観客として見るのも楽しいことを意味する。これは、STCCの新しい電動化規則において優先度が高いもののひとつだ」と語るのは、シリーズのコンペティション・マネージャーであるアレクサンダー・グラフ。

「私自身、新しいタイヤでSTCCの新型プロトタイプをドライブしたが、コーナー出口で長いドリフトに持ち込んでもなんら問題はない。それは魅力的かつ真に中毒性がある瞬間だね(笑)。制動距離が長くなればなるほど、オーバーテイクの機会が増えると同時に、これらのクルマを限界までドライブするためにすべてのスキルを使用する必要があるんだ」

 一方、改めてEV初年度に全6戦を実施する日程を確定させたSTCCは、6月中旬にユンビヘッド・パークことユンビヘッド・モートルバナで公式テストを実施し、新たな開幕戦となる7月のファルケンベリを皮切りに、8月のシェレフテオで初めて3ヒートのレースウイークを開催。カールスクーガ郊外のゲラーローゼン・アリーナを挟んで、こちらも8月へと移動したヘルシンボリ港湾地区での市街地戦は、洋上コンテナの間を縫うように“デュエル・ヒート”で争われ、9月のクヌットストープとマントープパークでのフィナーレへと続いていく。

「ホーカン・ヘルストレーム(同国内で人気のアーティスト)のコンサートとの衝突を避けるため、ヘルシンボリの新しい日程を決めた。代わりに多くの観客にとって非常に良い条件を提供する8月の特別な週末を取得している」と続けた前出のベルンCEO。

 さらにSTCCのプロモーション部門を担当するテッド・ヨハンソンは、ユンビヘッドの公式テストを学生に開放し、若い生徒がキャリアプランを検討する際に電気技術についての洞察を得るのに役立つ、特別なイベントのホストとする計画も明らかにした。

「我々は南スウェーデン地域の学校との協力を開始し、1000人以上の学生が現場に来て、STCCと国内フリートEVの現状を目の当たりにする機会を設ける。これにより将来のビジネスパートナーと一緒に、今後のキャリア形成に向け今現在学んでいることが、何を意味するかについての洞察を得ることができるだろう」とヨハンソン。

「このプログラムは電動ジュニアシリーズであるNXT Genカップとの協力を含め、STCCの再成長への投資と密接に関連している。我々としても、ドライバーだけでなくエンジニアやメカニックの面でも、新しい若い才能を引き出すために懸命に取り組んでいくつもりだ」

『EPWR』社が開発中のKitは、最高出力550PS想定のモーターにより0-100km/hは3秒以下、最高速も300km/hをマークする
併催予定の電動サポートカテゴリー『NXT Genカップ』は、実質『MINI E』のワンメイクとなる

■2023年STCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権 カレンダー改訂版

ラウンド 開催日 開催地
Rd.0 6月8〜10日 リュンビヘッド(公式テスト)
Rd.1 7月8〜9日 ファルケンベリ
Rd.2 8月3〜4日 シェレフテオ
Rd.3 8月18〜19日 ゲラーローゼン・アリーナ
Rd.4 8月25〜26日 ヘルシンボリ市街地
Rd.5 8月31日〜9月1日 クヌットストープ
Rd.6 9月22〜23日 マントープパーク

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