20年でイノシシ1000頭つかまえた男 自らワナにかかり、気付いたコトとは?

20年間でイノシシを1000頭捕獲した清神さん

 山口県田布施町下田布施の農業清神(せいじん)清さん(75)が、20年かけてイノシシ千頭を捕獲した。近所の畑が荒らされるという困り事相談をきっかけに狩猟を始め、箱わなの大きさや餌の置き方などに試行錯誤を重ねた。動物と人が共存できる里山を目指している。

 「山が里にだんだん迫っている。このままでは人間の方が柵の中で畑を作らないといけない」。清神さんは指摘する。毎朝7時に家を出て、山に仕掛けた箱わな10基を見て回り、餌を交換する。イノシシが入っていれば午前中に仲間と解体し、食肉は分け合う。

 町議だった2002年に「畑の小イモが食べられる」と相談を受けた。当時はイノシシをそれほど見なかった。町などと話し合ったが解決策を見いだせず、それなら自分で捕ろうと03年に狩猟免許を取得した。自分で箱わな5基を買い、山に置いた。

 猟期は11月から3月まで。1年目の捕獲数はゼロだった。なぜ。自ら箱わなに入って考えた。立ち上がろうとしたら頭が柵に当たり、イノシシにも狭いと気付いた。ものづくりが得意なのを生かし幅や高さを改造し、2年目は71頭を捕まえた。最高で年115頭を捕るほどになり、22年12月に千頭目を捕った。

 「研究心と好奇心」をモットーに場所や日付、天気、重さ、推定年齢などをパソコンに記録して分析。10年目ごろ「捕獲成功条件」を作って新人の猟師たちに配り、経験を共有した。今は地元猟友会の会長を務め、免許の講習会で教える立場になった。

 課題に後継者の育成を挙げる。個体数が増え過ぎれば、山も畑も荒れる。ジビエセンターのような処理施設が近くにでき、食肉を売れる仕組みができれば若手も参入できると提案する。「イノシシは豊かな山の恵みを受け育っている。その肉がおいしいと広く知ってもらうことで、里も守っていける」。可能性に期待している。

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