【Catch the Moment 11話】オクトーバー・ベースボールの興奮

大きなフィールドで、一球一球何が起こるか分からないのが野球。試合中の最高の瞬間を捉えるのは困難である。その中20年以上MLBカメラマンとして活躍する田口有史がこれまで捉えた「最高の一瞬(Moment)」を一話一枚ずつ紹介する。

MLBも10月に入るとポストシーズン。短期決戦で負けたら終わりのトーナメント形式となると、選手たちのテンションも高く、プレーのひとつひとつに喜怒哀楽が出ることが多くなる。

この写真はNLDSドジャース対パドレスの第4戦。この試合に勝ってシリーズを2対2のイーブン且ホームへ戻したいドジャース。今年の対戦シリーズ全てで勝ち越している強さを見せつけ、7回まで3対0と順調にリード広げる。しかしホームのこの試合で一気にNLCS進出を決めたいパドレスの執念が7回裏に爆発した。

7回裏、この回から変わったドジャースのケインリーが先頭打者を歩かせると、続くグリシャムがヒットで繋いでノラのセカンドゴロの間に1点を返す。そこで投手は交代するが、パドレスの勢いを止めることはできない。キム・ハソン、ソトのヒットで同点に追いつくとペトコ・パークは大興奮。

How to “Catch the Moment”

この球場内の雰囲気になれば、クローネンワースに逆転打が出るだろう。また、クローネンワースもベンチに向けてリアクションをするだろうと予測を立てた。最高潮に盛り上がるホームならでの雰囲気を活かそうと、表情のアップではなく、総立ちのスタンドが背景に写る画角のレンズに持ち替えて逆転打の瞬間を待った。

見事に逆転打を放ってダグアウトに向かって指差すクローネンワース。背景にはホームに向けて走るキム・ハソンと総立ちのスタンド。その間に失意のドジャースダグアウト。

「オクトーバー・ベースボール」シーズン中以上に勝ち負けに熱くなるMLBのポストシーズンを指してそう呼ぶこともあるが、その言葉を表すような写真になったと思う。

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