【Catch the Moment 15話】無常感を表す一枚

大きなフィールドで、一球一球何が起こるか分からないのが野球。試合中の最高の瞬間を捉えるのは困難である。その中20年以上MLBカメラマンとして活躍する田口有史がこれまで捉えた「最高の一瞬(Moment)」を一話一枚ずつ紹介する。

基本的に野球は雨の中では行わない。しかし、スケジュールに予備日を設けていない、そしてドーム球場が少ないMLBは、日本に比べて多少の雨の中では試合をする。特にプレーオフなどの場合は、雨天中断をすると、投手のコンディショニングの問題や、試合の流れが途切れるということもあり、一度試合を始めるとちょっとやそっとの雨では試合を続行する。

この日、NLDS第4戦は7回を終えると雨が降り出した。中断してもよさそうな激しさだが、次ラウンドに進むか決定するかもしれない大事な試合。我々もカメラマンもずぶ濡れになりながら撮影を続けた。

How to “Catch the Moment”

そうなると雨の雰囲気を活かして撮影しようというのがカメラマンの性。あまり工夫をしなくても写り込むほどの激しい雨だが、より、雨の滴が映り込むように、背景が黒くなるポイントでシャッターを切った。

試合は3点のリードを一挙に逆転され、打席には19年MVPながら今シーズンは先発を外れることも多かったベリンジャー。センターフライを打ち上げ、無念の面持ちで一塁に向かう表情に激しい雨粒の舞台効果が加わり、ドジャースの敗れていく無常感を表すよな写真になった。

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