公社の対応は権利乱用 営農者側が主張 諫干農地明け渡し控訴審

横断幕を広げ法廷に向かう営農者(中央)や支援者ら=福岡市、福岡高裁前

 国営諫早湾干拓事業の干拓地に入植した営農2社に、長崎県農業振興公社が農地明け渡しなどを求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が19日、福岡高裁(山之内紀行裁判長)であった。営農者側は公社の対応は権利乱用で信義則違反だと主張。一審長崎地裁判決について「耕作者保護の原則を不当に軽視した」と批判した。公社側は控訴棄却を求める答弁書を提出した。
 2社は2008年に入植したマツオファーム(島原市)とグリーンファーム(諫早市)。公社の主張をほぼ全面的に認めた昨年9月の同地裁判決を不服とし、控訴していた。
 意見陳述でマツオファームの松尾公春社長(65)は「(諫干農地でのカモ食害や排水不良への対応など)公社が賃貸人としての責任や義務を棚に上げたやり方に疑問を感じ、営農者の声に耳を傾けるよう求めた。これが気に入らなかった公社は、見せしめとして(農地利用権の)再設定を拒否した」と主張。「再設定されず、主な取引先から契約を打ち切られた。(控訴審では)再設定拒否で受けた多大な不利益も踏まえ、公平に判断してほしい」と訴えた。
 諫干農地を巡っては、公社が13年、2社の農地利用権(賃借権)を18年3月末まで再設定したが、同年4月以降については必要文書を提出しなかったなどとして拒否。明け渡しや賃料相当損害金の支払いなどを求め提訴した。
 次回期日は4月11日。


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