会社の発展に賃上げ必要、収益向上へデジタル化支援 福井商工会議所・八木誠一郎会頭インタビュー

「人が成長していく会社にするために、中長期的に収益配分を賃金に向けていくことは必要だ」と話す福井商工会議所の八木誠一郎会頭=福井県福井市の福井商工会議所ビル

 2023年の福井県内経済の展望について、福井商工会議所の八木誠一郎会頭に聞いた。

  ×  ×  ×

 ―23年の経済見通しをどう予想するか。

 なかなか予測は難しいが、原材料価格高騰や資源高は、よほどのことがない限り下がっていく方向にはならないと思う。消費者は物価高を肌で感じているので、消費行動も慎重になっているのではないか。欧米では「リセッション(景気後退)」に入っていると言われ、国内経済も厳しいと見た方がいいと思う。

 ―物価高の中で企業経営はどのようなことが重要になるか。

 中小企業も原材料高に対し販売価格への転嫁が進んできていると思うが、今年は電気料金のさらなる値上げもあり、大きなハードルになってくる。昨年はコストが増えたから商品価格を上げる、というやり方はできたが、物価高の中で消費者の目利き力が上がっており、今年は同じような価格転嫁をしていては通じなくなるのではないか。価格上昇を価値と認めてもらうための企業努力が必要で、新しい技術や商品開発に力を入れなくてはならない。

 ―政府は物価上昇率を超える賃上げを求めているが。

 会社を持続的に発展させるには人材が重要で、経営者が賃上げしたいと思うのは当たり前の気持ちだ。人が成長していく会社にするために、中長期的に収益配分を賃金に向けていくことは必要だと思う。ただ、賃上げ率となると企業規模によって違うし、商工会議所が中小零細企業に対して一律に上げなさい、というのは一方的過ぎる。会議所としてできるのは、企業のデジタル化や事業計画の練り直しを支援し、コスト削減や生産性向上で収益力を高めてもらうことだ。

 ―産業技術総合研究所(産総研)の北陸拠点が5~6月ごろ、福井県坂井市内に開所予定だ。

 県内経済にとってすごいチャンスだ。北陸拠点「北陸デジタルものづくりセンター」のバックには、茨城県つくば市の産総研本部があり、技術シーズ(種)を数多く持っている。県内企業の技術と掛け合わせ、技術の到達点やアウトプットを一緒に見いだしてくれるのではないかと期待している。福井は眼鏡や繊維などの技術集積エリアだけに、産総研を活用してさまざまな企業の技術を組み合わせ、「チーム福井」として新たな価値をつくり上げていきたい。

 ―福井県、福井市との「県都にぎわい創生協議会」で進めている、同市東公園を建設候補地とするアリーナ構想にどう取り組むか。

 地方都市の中心市街地活性化は重要で、(北陸新幹線延伸で)人々が集まってくる受け入れの選択肢の一つとしてアリーナがある。プロバスケットボールの試合の利用を見込んでいるが、それだけでは年間の6分の1程度しか使用しない。さまざまなコンテンツを考え、民設民営でどのように進めていくか、中身をしっかりと詰めていきたい。

 ◇やぎ・せいいちろう 早稲田大学大学院修士課程修了。1985年フクビ化学工業入社、2002年社長。21年6月から福井商工会議所会頭を務め、現在2期目。福井県経済団体連合会会長、福井県文化振興事業団理事長なども務める。63歳。

© 株式会社福井新聞社