パチンコホールの倒産が過去10年で最多、大淘汰時代に突入か

 2022年はパチンコホールの倒産が前年の2.1倍増の39件に急増した。過去10年間で最多を記録した背景には、長引くコロナ禍や5号機の完全撤去、6号機への入替え負担が重くのしかかった。2022年11月には起爆剤と期待されたスマートパチスロ(スマスロ)が導入され、未導入店との差別化を図っているが、新規客は目論見通りに増えていない。
 4月にはスマートパチンコ(スマパチ)も発売される。スマスロ、スマパチ導入はライバル店との競合で避けて通れない道だ。だが、サーバーやユニット交換、工事など多額の投資が必要で、資金力の乏しいパチンコホールの脱落がこれから本格化するとみられる。その後には、生き残った資金力のあるホール同士の熾烈な競争による大淘汰時代が始まりそうだ。

パチンコホールは第3次大淘汰時代へ

 パチンコホールの倒産は、CR機の規制が入った1997年に106件と急増した。大量獲得できるパチスロなどの射幸性が問題となった2001年も105件に達し、第1次淘汰の幕開けとなった。
 その後、淘汰は小康状態が続いたが、2006年にパチスロ4号機の撤去が始まると、資金力の乏しい小・零細ホールは遊技台の入替が難しくなった。警察庁「全国遊技場店舗数」によると、2007年の店舗数は前年比8.0%減の1万3,585件と急減。同年の倒産は1989年以降で最多の144件に急増し、第2次淘汰の嵐に突入した。  以降、人気機種の導入などで店舗数の減少は抑えられたが、2011年3月の東日本大震災で遊技人口が急減し、店舗数も減少が続いた。
 2020年以降、新型コロナ感染が広がると、全国のパチンコホールは休業を要請された。そうしたなか、2022年1月末に5号機が完全撤去され、射幸性の低い6号機の稼働率低迷や遊技台の入替負担などで小・零細規模のホールの体力は次第に低下していった。
 店舗数の減少率は、2018年から高まり、倒産も2022年は過去10年間で最多の39件が発生。2010年の39件以来、12年ぶりの高水準となった。

パチンコホール

期待通りに伸びないスマスロ

 2022年11月、コロナ禍でパチンコホールから離れていた顧客が待ち望んだ「スマートパチスロ(スマスロ)」が導入された。メダルに触れないため、コロナの感染防止策にもなる。休眠層の掘り起こしや現行規格より射幸性やゲーム性が高く、否が応でもパチンコホールの期待値は高まった。こうして高額な遊技台やユニット、サーバーへの投資を多くのホールが実施した。
 一方で、資金力の乏しい小・零細規模のホールでは、投資負担の重いスマスロ導入には二の足を踏んだ。
 スマスロは稼働したばかりで判断は時期尚早だが、ホール関係者によると、スマスロ導入店に顧客が流入し、年末年始のかきいれ時の売上には差が出たという。ただ、期待したほどの効果はなかったとのホールの声が多い。
 首都圏で導入したホールの担当者によると、「(スマスロの)稼働当初は、想定以上の売上が上がった」としたが、「射幸性が高まった分、顧客の資金的な負担も重く、年明け以降は稼働率や売上に陰りが見え始めた」という。
「店内のパチンコ利用客がスマスロに流れるケースが多い。スロットは売上増で、パチンコが減少。全体の売上は期待した水準に達していない」(同担当者)と分析する。
 スマスロでも機種によって、稼働や売上が大きく異なる。2023年は台数確保の段階からシビアな機種選びが加速しそうだ。

パチンコホール

スマートパチンコは4月スタート予定

 4月は、満を持してスマートパチンコ(スマパチ)が登場する予定だ。ユニットの詳細などは不明だが、基本的にはスマスロと同様に多額の投資が必要とみられる。そのため、資金力のある大手が先に遊技台やユニット、工事業者などを押さえ、資金力に劣る小・零細規模のホールとの導入数に差が出そうだ。遊技人口の減少や6号機の入替え、人手不足、電気代などの光熱費上昇と、運営コストは日増しに膨れ上がり、収益は厳しさを増している。
 大手ホールは、セルフ式カウンターやドル箱を積まない計数機でコスト削減が進んでいる。その一方で、小・零細規模のホールは広告費削減や中古台の利用などにとどまり、ホール運営の効率化の効果は広がりつつある。
 多額の資金投下でスマスロやスマパチを導入しても、資金繰りが厳しくなるホールはこれから増える可能性が高まっている。
 業界に詳しい関係者によると、「射幸性の面では現行と大きな差はなく、ホールにとってはスマスロより魅力は乏しい」と手厳しい指摘もある。
 とは言っても、ライバル店が導入すると後追いしてでも導入せざるを得ない。ただ、スマパチの導入が広がっても、集客の起爆剤になるかは未知数だ。ホールは多額の投資に踏み切るか、難しい選択を迫られている。

投資とコスト削減でホールの優劣が表面化

 遊技人口の減少や6号機の入替え、人手不足、電気代などの光熱費上昇と、運営コストは日増しに膨れ上がり、収益は厳しさを増している。
 大手ホールは、セルフ式カウンターやドル箱を積まない計数機でコスト削減が進んでいる。その一方で、小・零細規模のホールは広告費削減や中古台の利用などにとどまり、ホール運営の効率化の効果は広がりつつある。
 多額の資金投下でスマスロやスマパチを導入しても、資金繰りが厳しくなるホールはこれから増える可能性が高まっている。 p>

 スマスロとスマパチで集客回復を見込むが、スマスロを呼び水にスマパチも盛り上がるかは未知数だ。スマスロとスマパチの導入をきっかけに、2023年はホールの優劣がはっきりするかも知れない。
 小規模や資金力の乏しいホールの淘汰が加速した先には、さらに厳しい競争が待ち受けている。勝ち残ったホール同士が、さらに生き残りをかけた戦いに突入する。
 第3次淘汰時代は、大手ホールを巻き込みながら進んでいくだろう。

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