新型コロナ 今春「5類」に 医療機関、観光、飲食…長崎県内の反応さまざま

コロナ禍前に比べ、観光客はまだ少ない。「5類」移行で人の往来増に期待が寄せられている=20日午後、長崎市南山手町、大浦天主堂前

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが今春、季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げられることになった。コロナ禍になって3年。医療機関や保健所は感染者の対応に追われ、観光業や飲食業は打撃を受けてきた。各関係者や市民はどう受け止めているのか聞いた。
 最前線で感染者に対応してきた保健所。長崎県佐世保市新型コロナウイルス感染症特別対策室の小田寛司室長は「市民が適切な医療を受けられる環境の維持が最も大切だ」と話す。保健所が感染者の健康観察や入院調整をする機会は減るとみており、医療機関と連携する場面も少なくなれば「患者の受け入れで病院側の負担が大きくならないか」と懸念。「国は現場が混乱しないように対策を考えながら進めてほしい」と求める。
 森崎正幸県医師会長は「日本は世界でも高齢化が進んでいる。欧米と同じ対応では難しい部分もある」と高齢者を守る体制の維持を訴える。「お年寄りに会うときにはマスクをするなど場面に応じた対応を、一人一人が判断できるような啓発が必要だ」と述べた。
 一方、これまでは感染者や濃厚接触者の待機期間が長く、「流行期は医療や介護の現場でも感染が広がり、人手が不足してきた。待機期間がなくなれば解消につながるのではないか」と話した。
 コロナ病床を設置し、多くの発熱患者を受け付けている長崎北徳洲会病院(西彼長与町)。鬼塚正成院長は「ワクチンを接種していない人の重症化が目立つ。悪化を防ぐためにコロナ治療薬を使うが、かなり高額」と説明。現在は公費負担だが、段階的に自己負担になる可能性がある。「ワクチン接種で重症化を防ぐことで病床の逼迫(ひっぱく)を抑えられ、結果的に患者さんの負担も減ることになる」と接種の重要性を強調した。

 雲仙観光局の山下浩一代表理事は「人の往来が増えるのはありがたい」とする一方、「旅行支援などがなくなればコロナ禍前の競争に戻る。生き残るためにさらに魅力的な観光地にならなければ」と気を引き締める。
 「夜は客足が戻っていない」と話すのは、長崎市桜町で居酒屋を営む茅野貴稔さん(56)。書き入れ時の年末年始は、感染拡大で企業の飲み会自粛による予約キャンセルが相次いだ。「直前の連絡もあり、どうしようもない」と5類移行で平時に近づくことを願う。
 五島市栄町の自営業、田端純子さん(76)は「経済は回さないといけないが、感染者が多い現状でマスク着用がなくなったり、制限を緩めたりするのは不安。(自身は)マスク着用を続けるだろう」。長崎大3年の遠山和泉さん(20)も「感染者数も死者数も減っていない。新しい変異種も確認されている中で室内でのマスクの着用を緩めるのはさらに感染拡大を招くのではないか」と懸念する。
 長崎市の30代男性公務員は5類移行を歓迎。これまで県外への旅行は控えており、「子どもたちと旅に出ようかなという気持ちにもなる」と想像を膨らます。


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